2012年11月10日

6.54kgのクロモリバイク ミヤタ「Elevation Extreme」


一昔前のロードレーサーの完成車重量といえば、8~9kgの間であればレース機材として標準的とされる時代だった。
それがマテリアルの進化とともに、急速に超軽量バイクが市場に現れ、今や実用面の問題を含めても誰しもが6kg台のバイクを手に出来る時代となった。

それこそ15年ほど前までは、一部のブルジョア層以外は何の抵抗も無くクロモリバイクに乗っていたし、周りも人々ほぼ同じスペックだったので、特に問題は無かった。

それからしばらくし軽量化は加速。
アルミニウムという素材が台頭し、最近ではカーボンバイクでなければレース機材にあらずといったところまで世間に浸透している。
そのため、100年以上の歴史を有するクロモリをはじめとするスチールバイクはすっかり過去の遺物にまで成り下がってしまった。

やはりスチールではダメなのか・・・
たしかに一部マニアの間や、ロングツーリングなど、クロモリの良い部分にこだわるユーザーは確かにいた。
しかし重量という壁の前ではどうすることもできない場合がある。
そう、レースの世界である。

今回ミヤタが発表した「Elevation Extreme」という6.54kgのロードレーサーは重量も驚くべき点ではあるが、もっと意外だったのはミヤタのHPを見れば分かるが、しきりに「戦うためのバイク」「ヒルクライム」という言葉が登場する。



カーボンならもっと軽くできると言ってしまえばそれまでだが、現在UCIが規定している自転車の最低重量は6.8kgのため、余力は無いにしろ互角に戦えるスペックだろう。
先にも述べたが、スチールバイクのメリットは数あるが、デメリットは「重量」という部分に尽きる。
この部分がクリアできれば、十分に機材選びの選択肢に参入できるだろう。


「Elevation Extreme」は、けして懐古主義的なバイクではない


今クロモリという名前を出すと、「古き良き・・・」「伝統の・・・」などいう装飾が付けられることが多いが、このバイクにはその言葉は似合わない。
もちろんミヤタには「The miyata」シリーズがあるためキャラクター分けはしていると思うが、自転車界でのクロモリに付きまとう“どこか古臭い雰囲気”から脱却させようとするミヤタの意気込みには関心させられる。

「The miyata」との主な違いは・・・
・パイピング素材
・オーバーサイズインテグラルヘッド
・COLUMBUSオーバーサイズカーボンフォーク
・ラグレスフレーム(フィレットブレージング)
・スローピングフレーム形状
・カンパニョーロESP対応

などだろう。
伝統的クロモリフレームの定義といえば、ホリゾンタルのラグドフレームに1インチフォークという条件が付けられるが、それをあえて外す意味は大きい。
とくにラグレスフレーム(フィレットブレージング)は古くからある手法ではあるが、ラグを使用しない分軽量になるメリットと引き換えに、ラグドフレームより手間がかかるため、大手マスプロメーカーでこのフレームを販売しているところは皆無であったと思う。

サイクルモード2012では未塗装フレームの展示もあった。


フィレットブレージングは見た目が非常に美しく、個人的にももっとも好きなフレーム仕上げの一つだが、現在では個人ビルダーに依頼する以外は入手方法がないのが残念だったが、ミヤタが手がけることになれば購入を考えるユーザーも増えるだろう。
ちなみに「ラグレス」と「Tig」を混同している人もいるようだが、二つは似て非なるものである。

自転車フレームの接合方法
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2012/11/blog-post.html



このように塗装されたラグレスフレームはモノコックであるように美しく見える。

気になるフレーム単体の重量だが、カンパEPS非対応で「1540g(460mm)」となっている。
この重量、実はよく考えればけして軽いほうではない。
たとえば、超軽量カーボンの「クォータ KOM AIR」はフレーム重量は765gでちょうど半分。
一般的な価格帯のカーボンフレームでも900~1200gが相場となっている今、単純に重量スペック競争をするのは確かに厳しいかもしれない。
しかしそれでもこのバイクに乗りたいと考える人は大勢いるだろう。
「スチールバイク」には人々を魅了してやまない“何か”があると思う。

ちなみに他の国内メーカーのスチールフレーム重量では
・Miyata Elevation Extreme
 1540g (460mm)
・Anchor Neo-Cot RNC7エキップ
 1675g (530mm)
・Panasonic POS FRC15
 1710g (550mm)
・Panasonic POS FRT06(※チタン)
 1420g (550mm)
・The miyata レジェンドブルー
 2030g (540mm)

と一見するとミヤタが圧倒的に軽そうだが、基準となるフレームサイズがバラバラのため、はっきりとは分からない。
むしろアンカーネオコットとパナソニックPOSクロモリの重量がかなり軽く、ミヤタの「Elevation Extreme」がようやくそこに追いついたのではないかとすら思わせる。
おそらくフレームサイズをすべて同じにした場合、国内3社の重量はほぼ同じになるような気がする。
つまりそれほどまでに日本のクロモリレベルは熟成しているとも言い換えられるのではないだろうか。

予断だが、サイクルモード2011に出展していた「ボンバープロ」にはなんと1kg以下のピストフレームがあった。




使用したパイプセットは忘れたが、絶版のスーパーライトの類だったと思う。
スチールで900g台ともなればまさに夢のようだが、近くでみると実用性はほぼ度外視された究極軽量フレームの仕上がりであった。
日本のマスプロメーカーは様々な制約や規制の中で成り立っているため、このようなチャレンジは難しいかもしれないが、是非とも世界に通用する技術力を取り戻してもらいたいと思う。

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