2014年9月9日

「RAWカラー」クロモリフレームの作り方 【前半】

もし自分がフレームビルダーだったとして、未完成の作品は人に見られたくないと思うだろう。
しかしその反面、普段は見られない部分だからこそ他人の秘密を垣間見るような特別な高揚感を与えてくれるのかもしれない。


最近一部で流行の兆しを見せる「RAWカラー」
RAW(ロー)は「生(なま)」という表現がぴったりだ。
未塗装のスチールが放つ、質素でありながら重厚、そしてどこか艶かしい鈍い輝き。
例えば、コアなファンを持つことで有名なブロンプトンM6LでRAWカラーは非常に人気があるのも納得がいく。

ここで不思議なのが、なぜ100年以上もの歴史を持つスチールフレームでこのような素材そのままのカラーリングが存在しなかったのか?
それはおそらく、邪道だったからだろう。
スチール、つまり鉄は他の素材と比較しても錆びやすいというマイナスの側面がある。
フレームビルダーや自転車を作る側としては、最高の状態でユーザーの元へ届けたいというのは当たり前の考えだろう。
そして使用するユーザーとて、美しく完成されたフレームを手にするのが理想であって、仕上げ途中のものを好き好んで欲しがるということは少なかっただろう。

しかし近年のクロモリブーム、NAHBS(北アメリカハンドメイドバイシクルショー)に見られるような、手作りへの再評価を経て、その工程までもが美的センスの対象となってきた部分は大きい。
またそれに加え、科学技術の進化もあるだろう。
錆びやすい鉄素材を、まるで旧ソ連のウラジーミル・レーニンをエンバーミングするがごとく、そのままの姿を留めるフィニッシュの方法もいくつか考案されている。


さて、では実際にはどのようになっているのか? 誰でも簡単に手にすることができるのか・・・

答えは残念ながらNOだろう。
食べ物に例えれば、これは「生ユッケ」だ。
という表現は少々強引かもしれないが、冷蔵技術や衛生手法が確立され、食肉を生で食べられるようになったとは言え、やはり非加熱のリスクは伴う。

塗装であれば、皮膜は何層にもなり、紫外線から素材を守り、錆びや衝撃による地肌の露出にもある程度は対応できる。
しかしすべて透明なものだけでコーティングするとなれば、やはり限界はある。
その限界、しかも普通の自転車ショップでどこまで再現可能なのか、今回はチャレンジしてみた。


まず最初に用意するのは、スチールのフレーム。
ラグでもTIGでも問題ないが、今回はその両方の手法で構成されたRALEIGH(ラレー)のSDL (Sherwood-DL/SDL シャーウッド-DL)を使用してみた。

もちろん新車の塗装をいきなり剥ぎ取るのはもったいないので、使い古しだ。
ちなみにラレーというブランドは、比較的安価ながら作りは非常に良い。
話は逸れるが、ラレーと言ってもラレーUKやラレーUSとは関係はない。
商標権を持つ新家工業がラレージャパン名義で販売している日本向けの商品だ。
生産国は台湾か、最近品質が非常に良くなってきたインドネシアあたりだろう。
アラヤが扱う自転車はこの2国のものが多い。

さっそく塗装を剥離する。
理想は塩素系はくり剤だが、環境やその他の問題によりホームセンターなどでは入手しづらい。
事前に業販かネットでの手に入れておくべきだろう。

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剥離剤を塗布して数分後、塗装が浮き上がってくる。

スクレーパーで除去しきれない塗膜はワイヤーブラシなどを使って取り除く。


使う予定のないキャリアダボは除去。
リッチーロジックを彷彿とさせるエンドまわりが際立つ。

完全に塗料を剥がした状態となれば、この作業はここまでとなる。
この状態でも非常に美しい輝きを放っており、できればこのまま組み上げたい気持ちにもなるが、残念ながら雨でも降ればすぐに錆び始める非常に不安定な状態であることを忘れてはならない。

次の回でこのあとの工程を説明したいと思う。


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