2015年10月3日

【最新2016】 ブリヂストン2016年通学自転車カタログ

いよいよ発表された国内メーカーの2016年モデル。
為替の影響による価格アップがどこまで抑えられるかが注目されていたが、まあまあ想定内といったところだろう。

先ほど冒頭で「いよいよ発表」という言い方をしたが、正式にプレスリリースされた情報なのかを実はまだ確認していないため、もしかしたらフライングかもしれないが、すでにカタログが出回っているのだがら、そういうことなのだろうと解釈している。

今回の目玉はなんといっても、日本国内に生産ラインを持つ強みを前面に打ち出した「上尾式フレーム」だ。
知っている人間からすれば、当たり前過ぎて困惑してしまうかもしれないが、中国製品が市場に蔓延した現代では、マイノリティとなってしまった純国産自転車の付加価値は非常に高い。

上尾式というのは、ブリヂストンのお家芸であるダイキャスト方式で生産されたフレームのことを指すのだが、これは最新技術の登場という意味ではなく、60年以上も続いている日本の伝統技術を再度アピールすることにより、商品価値を高めようといった販売戦略的な部分が大きいのだろう。

なぜ今さら「上尾式」なのか?

少し辛口なことを言わせてもらえば、このダイキャスト製法は「枯れた」技術であり、2016年になってから大々的に打ち出すのは「日本にはこれしか必殺技がない」という裏返しにも捉えられ、少々恥ずかしい事とも思えるが、なぜ今なのかといえば、やはり昨年からの急激な円安が要因だろう。

日本の自転車メーカーは、「海外で安く作って、日本国内で売る」
これを基本スタンスとしてなんとか生き延びてきたわけだが、円安が進行すればこの図式は崩壊する。
例えば、これが自動車メーカーだったとしたら、為替の変動に対しても、輸出と輸入のバランスがあり、それなりにリスクヘッジが取れるのだが、輸入一辺倒の国内自転車メーカーにおいて、円安からの逃げ道はどこにもない。

そこで円安の影響を受けにくい日本国内での生産に回帰しようという流れになるのだが、残念なことに、日本国内は90年代から始まった海外への技術移管によって手元には目新しい技術などほとんど残っていなかったのだ。

そこで、既存の技術であるダイキャスト方式に「上尾式」という新しいネーミングを与え、国内生産に活路を見出そうというというのがブリヂストンサイクルの戦略だと推測することができる。

ちなみにブリヂストンのダイキャスト技術は非常に高く、自転車以外にも展開されている。
かつてブリヂストンサイクル内に工機部門を有していた時期があったのだが、常に業績の悪い自転車部門とは違い、工機部門は好調であり、「工機がなければサイクルはない」と業界内で噂されるほどだった。

その後2000年代に入り、輪界氷河期をなんとか乗り切ったブリヂストンサイクル株式会社は2007年4月に工機部門を切り離し、現在では自転車関連の専業となっているが、工機部門分離の際にも、インテリな自転車店店主がチクチク言っていたことを思い出す。

2016年モデルでの大きな変化はあるのか?

まだ現物が入荷してないため、カタログからの推測にはなるが、基本的にはカラーと価格以外は変わっていない車種が多い。
新製品は「キャスロング」と「スクリッジ」が新しく登場しているが、どちらも名称のみで自転車自体は継続商品だ。

キャスロングは「スターノヴァ」「シングルスター」「ジョブノ」の統合でダイキャストフレームのラインナップのシンプル化が図られている。
スクリッジについては前世が多すぎるものの、カタログ内であれば「ノルコグ」の名称変更だと考えていいだろう。

カタログラインナップを見れば、車種が統廃合されたことにより、比較的分かりやすく、見やすいカタログになったと感じる。
しかし、ここまで価格が高騰すれば、カタログラインナップの販売減は明らかである。
それを補うために2016年もまたカタログ外商品を多方面のルートに供給し、市場に出回るBSC商品のスペックは、自転車屋でも記憶しきれない状態になるだろう。

2年目に突入する「アルベルトe」はどう動くか?

フィクションサイクルに来る担当セールスに聞けば、「アルベルトeはなかなか好調ですよ」と答えるが、それはまさにセースルトークというもの。
街中を見渡しても、その台数は圧倒的に少ない。
そもそも「eBELT」の時から店頭に置いてユーザーの反応をチェックしているが、パワー不足などの問題によって、試乗したお客さんが他のメーカーに流れてしまっているケースはとても多い。

一方で地方エリアの情報を聞いてみれば、電動アシスト車での通学は確実に増えており、従来からの絶対的なアルベルト基盤によって、このアルベルトeもまあまあ動いているというのだから、これはブリヂストン的には狙い通りなのだろう。

見た目では2015年からの継続に思えるが、新たに大容量バッテリー搭載の「B300」が登場し、より長距離を走れることに加え、日々の充電作業にかかる手間も少なくなる8.1Ahサイスがラインナップに追加されている。
アルベルトeは国内では珍しい36V仕様のため、比較を行う場合はアシスタなど通常仕様の25.2Vに換算して考える必要がある。
このような数式に当てれば、今回追加されたB300は「11.6Ah」という結果となった。
これだけの容量があれば、よっぽどの長距離通学でなければ、数日に一回の充電で足りるだろう。
アルベルトeだけは値上げの対象となっておらず、なんとか据え置きに留まったカタチだが、さらにプラス7000円で大容量のバッテリーを用意するなど、電動では攻めの姿勢を見せていることから、やはりブリヂストンの本命は収益性の高い電動アシスト自転車へのシフトなのだろう。

そして地味ではあるが革新的に感じたポイントがあるのだが、従来メーカーは大容量バッテリーモデルをフラッグシップ機として、価格に見合うだけの豪華装備を与えてきたのだが、このアルベルトeの「B200」と「B300」の違いはバッテリーサイズの違いだけだ。

例えば、同じブリヂストンの「アシスタロイヤル」と「アシスタDX」の比較では、バッテリーが『8.7Ah→12.8Ah』に上がるのに比例し、価格も『¥104,800→¥139,800』と3万5千円のアップと、バッテリー単体の差額より遥かに高くなってしまう。

これはどこにでもある付加価値商法であり、悪いことではないのだが、単純に大きなバッテリーが欲しいだけなのに、豪華装備まで押し売りされてしまうという、選択の不自由があったのだ。
もちろん、それだけ長距離を走るのだから、タイヤを丈夫に、チカラも強く、パーツは錆びにくく・・・といったメーカー側の親切心でもあるのだが、今の若年層はそういったことをあまり望まない傾向にあり、アルベルトeはそれをうまく汲み取ったかたちとなっている。

従来の「大容量バッテリーモデル=高付加価値」という自転車メーカーの鉄則ビジネスを破壊しかねないブリヂストンのチャレンジが、今度業界にどのような影響を与えてくるのか、気になるところだ。

密かに自社ユニット化されたステップクルーズの意味するもの

あまりに扱いが小さいため見落としてしまいそうになるが、女子中高生に圧倒的な人気を誇るティーン向け雑誌“Seventeen(セブンティーン)”とコラボし開発したモデルでも話題となった「ステップクルーズe」に2016年はアルベルトeと同様、自社開発をうたうフロントハブモーターと、ブリヂストンサイクルがもっとも得意とするベルトドライブが搭載されることとなった。
自社ユニットについては賛否両論あるものの、他社にはないオリジナル色の強い商品になったことは間違いないだろう。
特にデザイン面で妥協を許さない女子中高生への訴求力は高く、アルベルトeが取りこぼしていた電動通学需要へのフォロー体制も整いつつある状況だ。

ご存知の通り、ブリヂストン系の電動アシスト自転車は黎明期よりヤマハとのタッグによって市場に供給されており、長年に渡り培われたユニットへの信頼は、販売店サイドとしても高いものであった。
しかし今回あえて自社ユニットでのラインナップを拡大してきた理由としては、単にフロントモーター、ベルト駆動の「デュアルドライブ」の有効性が市場に認知されたからというものではなく、ブリヂストンサイドの経営戦略としての意味合いが強いと思われる。

電動アシスト自転車の心臓部分であるユニットの供給を他社に握られている現在のブリヂストンサイクルが、パナソニック、ヤマハとの三つ巴の競争の中で不利であることは誰の目から見ても明らかだ。
また仲間であるはずのヤマハもユニットサプライヤーとしての地位を強化しており、自社ブランドの展開だけでなく、ブリヂストン以外の提携先を熱心に捜し求めている。
そのような状況の中、ヤマハとの蜜月関係を解消し、自身の生き残る道を切り開くことは、ブリヂストンサイクルにとっても急務であり、今回の自社ユニット化は今後の舵取りの序章だと言えよう。

以下はブリヂストン以外からフレーム供給を受けるとされるヤマハユニット搭載機種
中国に自前の製造ラインを持つS社のものと噂されている。

これは余談ではあるが、ブリヂストン製フロントモーターはパワー不足を指摘されることがあり、当店でも急な坂道での発進時などでモタつくことを確認済みだ。
理由を説明すれば非常にマニアックな内容になってしまうため簡素にまとめるが、このフロントモーターは業界初(知る範囲で)のダイレクトドライブモーターであり、遊星ギアによる減速機構を持たないため、コンパクトでありながら非常に滑らかで高い静粛性を持っている。
このことはアルベルトeを試乗した人が最初に感じる部分であろう。
しかし、引き換えに回転初動時のトルクを補うことが出来ず、坂道に弱いという欠点を持ち合わせることとなってしまった。
もし改善策があるとしたら、モーターの性能を向上させるか、もしくは供給する電圧を高くすればいいと考えられるのだが、どちらともすぐに対応できる課題ではないだろう。
特に電圧は従来型の25V前後と比べ、約1.5倍も高い36V仕様であるが、これも出力と安全面を天秤にかけた際のギリギリの落としどころだったと思われる。

電機業界では「42ボルトは死にボルト」という語呂合わせの言葉が存在するが、これは42V以上の電圧に感電すれば、生命に危険があるという意味だ。
42V”は “死にボルト”
(社)日本電気協会では、人が接触する状況に応じて許容しうる接触電圧を定めています。人体が著しく濡れている状態とか金属製の電気設備等に人体が常時触れている状態では25V、通常の状態では50Vと定めています。42Vでも体が濡れていれば感電死する危険が十分にあります。
「42Vは 死にボルト」、 電気は低圧でも危険だ、という認識をしっかり持つことが大切です。危険な刃物などは、見れば危険とわかり気を付けます。電気は充電部の金属が見えるだけで電気自体は見えません。低圧でも触っただけで死ぬことがあります。
http://www.tokyotsa.com/file/17_jirei.pdf
このことはY社などの電動バイクを扱う販売店向けのメーカー講習でも良く言われる。
つまり、今すぐパワー不足を解消しろと訴えても、これは時間のかかる課題だと捉えたほうがいい。

注意しなければならないのは、ステップクルーズの2015モデルと2016モデルはカタチこそソックリではあるが、アシストの特性に大きな違いがあるということだ。
友達に借りた2015モデルを気に入ったので、2016モデルを買ってみたら、思っていたのと違った」という過ちを犯さないためにも、試乗は必須だろう。

BRIDGESTONE bicycle Catalogue 2016

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※フィクションサイクルではブリヂストンの自転車は取り扱っておりません



関連

【最新2016】 パナソニック2016年通学自転車カタログ
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/10/2016-panasonic-catalogue.html

まさかのパナソニック製ユニットを採用したブリヂストンの狙い
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/11/assista-basic-2016.html

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