これまでに何台の自転車が、どれほどのライダーによってインプレ文が書かれてきただろうか?
今回のインプレはどこまで自然に、違和感無く、「とんかつ化」していくかをフィクションサイクル的な視点で迫っていきたい。
実は昨年のGDRメテオのデビューに合わせ、フィクションサイクルでもインプレバイクを借り受けていたのだが、諸事情で記事の作成が延期してしまい、もはやメテオに関する情報はホットなものではなくなってしまった。
そんな時、とある惣菜屋からこんな話を聞いた。
「うちはトンカツが売れ残ったら、次の日にはカツ丼にしちゃうよ。卵とじすれば分からないし。この残ったとんかつは『アニキ』って呼ぶんだ」
これをヒントに考えたのが、古くなった書きかけのレビューの再利用だ。
どう活かすかを考えたが、惣菜屋に敬意を払い、やはりトンカツネタでいくのがセオリーだろう。
なお、本来は「とんかつ」と表記するべきではあるが、文章内での読みやすさを考慮しカタカナで「トンカツ」としている。
※本当にメテオのレビューだけが読みたい方はご遠慮ください。まともな答えはありません
ゴルフシャフトで有名な彼らが自転車フレームに参入したのはわずか8年前のこと。
この短い歴史の中で次々とタイトルを獲得してきた「名車」たちはどのような進化を遂げてきたのか、今回は2014年の4月にリリースされた「METEOR」と従来の「METEOR speed」の2台の乗り比べインプレ試乗を行ってみたいと思う。
今回フィクションサイクル店長と共に試乗に協力してもらうのは、シャンソン歌手でありながらスポーツ自転車へ普及活動でも有名な、自然食品ファーム「ホワイト」代表の野田さんだ。
残念なら今回の試乗企画はコースや時間的な制約が多く、限られた条件でのインプレとなってしまったため、潜在能力が完全に引き出せていないことを事前にお伝えしておきたい。
「METEOR」 vs 「METEOR speed」はここが違う
METEOR speed
「まず最初はメテオスピードのほうなんだけど、これの特徴ってどこだと思う?」
野田(以下:野)
「難しいね。ずば抜けて剛性が高いとか、登りが軽いとか、平地巡航が早いとか、特筆すべきところは無いかな。ただすごく乗りやすいってことは断言できる」
店:「そうそう、このバイクは乗りやすい。ただ、どうして?って聞かれたときに困っちゃうんだけど、全体バランスが良いとしか言えないね」
野:「それって反対に言えば、弱点もないってことだよね。そこそこフレームがしなって、乗りやすくて、結果速いってのを実現するのは相当のノウハウが必要でしょ」
店:「そこはやっぱりグラファイトデザインの開発力の高さが出たかな。ゴルフクラブで培ったカーボン技術に、長年自転車開発をやってきた人たちが融合したからこそ、短期間で優れたフレームが完成できたんだと思う。自分達は当時ネオコットでレースやってきた人間だからね、その開発者の意志が受け継がれていると思うとちょっと嬉しい」
野:「抽象的な内容が続いたけど、具体的にどう?例えば僕が感じたのはダッシュを掛けた時の反応がリニアじゃなくて、周回で何回もアタックがかかったりする場面ではモタつくかなって。BB周辺のたわみはちょっと大きくて、ウィップの返しも速いほうじゃないから、ゆったり漕げる半面、早い反応が欲しいときに物足りない気がする」
店:「さすがに短距離選手じゃないね、長距離向けでしょ。しかも150km超えとかなら最後に足が残せるだろうし、今でも勝機はあるね。現にツールド沖縄とかでも勝ってるし。これを弱点と捉えるか、利点と捉えるかはシーンによって違うけど、よっぽど脚力がある人以外なら、乗り方次第でコントロールできる範囲だと思う」
METEOR
野:「次に今回のメインディッシュ、メテオなんだけど、これは見た目とは全然違うバイクだった。カーボンのラグドフレームで、さらに丸パイプだったら軟らかいのかなと思ってたけど、なかなかレーシーな仕上がりだよね」
店:「やはり高剛性化の需要は高いってことだろう。レースとかの集団の中ではある程度トレンドに沿ったフレームに乗っておかないと、加減速でのタイミングロスなんていう思わぬマイナス面もあるからね」
野:「これ目隠しして乗ったらラグドじゃなくてモノコックって答えちゃいそうなくらい、ラグドらしくない(笑)まぁコルナゴの例とかもあるし一概には言えないけど」
店:「これは固定観念かもしれないけど、モノコック=硬くて高剛性、ラグド=しなやかで低剛性っていう考えは通用しないね。カーボンの成型技術もかなり上がってきたし、モノコックでもラグドでも再現できる乗り味の幅が広くなってるんだろう。そりゃモノコックのほうが理想的なのかもしれないけど、複数のサイズを作ったり、細かい剛性のセッティングなんかはラグドのほうがやりやすいからね、こういう判断がGDRの開発レスポンスの良さに繋がっているんじゃないのかな」
ラグドに見えてモノコック、絶妙な使い分けから見えるもの
野:「このメテオの面白いところは、ラグ(繋ぎ手)がパイプと一体(モノコック)になっているってところだよね。この発想って今まであんまりなかった」店:「ここはやはりフィッティングを重視しているってことだろう。完全モノコックは金型を全部そろえないといけないからね。世界的メーカーならともかく、小規模生産ならこのほうが微調整が利くし、そこがGDRの上手いとこだね。『シートコア』という名称にもあるように、これがGDRの売りポイントだろう」
野:「上手いと言えば、このキャベツも見てほしい。均一でありながら細さも絶妙だね」
店:「あくまでトンカツが主役なんだけど、やっぱりキャベツがないとダメ。その点で言えば『燕楽』の大将がキャベツを刻む音は、店全体の雰囲気を格調高いものにしているよね」
野:「格調高いっていう表現が適切かどうかは分からないけど、伝統というか、風格というか、ほどよい緊張とリラックスが同時にやってくる感じがする」
店:「ここがやはり『とんかつとんき』と違うところかな?とんきはもっと大衆的なオーラがある」
野:「だね、『燕楽』は大衆的ってよりも、もうすこしコンフォートとは違う方向に向いていると言っていい」
ヘッドパイプ周辺
左:METEOR speed 右:METEOR
シートパイプ周辺
左:METEOR speed 右:METEOR
ハンガー周辺
左:METEOR speed 右:METEOR
ベテランの職人たちが織り成すリーンな作業風景
野:「さすがに『とんき』は老舗だけあって、ライブ感の演出なんか安定感あるよね」店:「ここは結構待ち時間が長い傾向(目黒本店)にあるんだけど、来店客の捌き方なんか良く見ればすごいよ。あれで順番覚えてるなんてね(笑)」
野:「キャベツのおかわりなんかも的確に突いてくるよ。ご飯、豚汁ともに補給のタイミングに隙がない」
店:「あの連携プレーも味へのこだわりのひとつなんだろう。さて肝心のトンカツだけど、思ったよりシンプルなスタイルだった。衣はサクッ、中は火がしっかり通りつつ、そこそこジューシーというポイントはしっかり押さえてあって、だけど食べ飽きない良さがある」
野:「一口目が勝負みたいな味じゃないね。そいういのは後半からつらくなって、白米頼りになっちゃうんだけど、ここのはパンチはそれほど無いけどフラットな特性が持続できるから、また来ようって気持ちになれるね」
店:「自分たちはついつい最大値で考えちゃうけど、細く長くって考え方なら『とんき』のトンカツはありだね。スプリントだったらもっと肉に脂身を増やしてパンチで勝負したほうが良いんだけど、オフシーズンにLSDやれって言われたら『とんき』を選ぶと思う」
野:「ひとつだけ気になったんだけど、衣と肉の隙間がちょっと開きすぎている気がした」
店:「やはりあのクリスピーな食感の衣だと、肉との密着を維持できないのかも。ただこれは慣れの問題で、トンカツって思うんじゃなくて『とんきのトンカツ』って思うことによって良い方向に昇華できるんじゃないかな」
池上の正統派とんかつ『燕楽』を食す
店:「個人的にここが行きつけだから、ちょっとひいき目になっちゃうかもしれないけど、ここは戦闘力高いよね」野:「まず店に入った時の雰囲気が重くて軽い(笑)若い大将が出迎えてくれるんだけど、あー『燕楽』にきたなーって清清しい緊張感が好き」
店:「これはやっぱり大将の仕事への取組みから発せられるものだね。けっして高級感を出そうとか、お高くとまろうっていうんじゃなくて、演出でない本物って感じが伝わってくる」
野:「やっぱり店長はひいき目じゃないの(笑)まあそれは冗談として、味も含めてその意味は分かるよ。これはやっぱりリピーターだから言えることだ」
店:「トンカツの味については申し分ない。さっきの『とんき』と比較すれば、こっちは短距離から中距離がターゲットで、たっぷりジューシーな脂感とサックリとした衣。平田牧場の三元豚はダテじゃない!」
野:「普通であれば、胃に重たく感じるのかもしれないけど、やはり素材が上質だからこそ重さを感じさせないってところは大きいね。そして低温でじっくり揚げるという製造過程が旨みをアップさせているのだろう」
野:「ポテトサラダは確かに美味しかった。単品だと少し価格面で不利かと思ったけど、その価値は十分にあるね」
「METEOR」は「METEOR speed」からどう進化したのか?
店:「明らかに戦闘力アップしているよね。ただこれはキャラクターの違いであって、メテオスピードがダメってことじゃないし、逆にメテオになってスポイルされている部分もある」野:「トンカツと比較してどうかな?GDRは国産(フレーム製造ラインはQCされた中国)をアピールしているけど、同じく国産の三元豚と通ずる部分はあるんじゃないかな?」
店:「正直、トンカツと自転車を同列に語るのはなかなか難しいけど、食べるならトンカツで乗るなら自転車だね。その中でもやはりチョイスは重要で、どれが自分に合っているのかをしっかり見極めたほうが良い」
野:「『METEOR speed』が『とんき』だとしたら、『METEOR』は『燕楽』ってところだろう。それぞれ良さがありシーンによって生かされる部分が違うって事」
店:「自分はそこまで当てはめて考えられなかったけど、『とんき』をシマノのWH-6800と同じレベルと仮定すれば、『燕楽』はコスミックカーボン40Cってところだろう。つまりこのGDRの2台はトンカツ屋の味の違いほどは離れた存在じゃない。説明するにはホイールのキャラクターくらいの差が必要だよ」
野:「コスカボ40Cを出してくるとか、やっぱり贔屓なんじゃないの?(笑)」
店:「まあ、『燕楽』の味はそのくらいズバ抜けているって意味で(笑)」
まとめ
やはり当初から予想していた通り、トンカツと自転車ではジャンルに差がありすぎて違和感を消し切ることができなかった。しかしその難しさの中から見えてきたものは、GDRの商品作りに対する考えの深さだった。
海外ブランド全盛期において、それに立ち向かう日本発メーカーの動向から今後も目が離せない。
関連情報
とんかつとんきとんかつ燕楽
※GDRとトンカツ屋さんには何の関係もなく、またGDRに対しても個人的な恨みなどは一切ありません
※METEORにはしっかり試乗をしておりますが、途中で書く気が途切れたため、フィクションサイクル特有の架空記事となっています。
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