2014年9月30日

メリダ「SCULTURA vs RIDE」 どっちの「400」を選べば良いのか?


メリダ(MERIDA)といえば台湾を代表する世界的な自転車メーカーであり、その規模は業界最大手のGIANTに続く二番手を行くトップメーカーだ。
しかし日本での知名度は低く、トレックやキャノンデール、スペシャライズドといった花形ブランドの影でひっそりとしている印象がある。
これは内情を知る自転車界の人間は、非常にもったいないと思いつつも、また非常に“オイシイ”と考えている。

出生をしっかり証明できる自転車

当たり前のような話ではあるが、現在の自転車界には身元不明の完成車が満ち溢れている。
例えば、上であげたUSAブランドの3社だが、これも実は例外ではない。

トレックがウォータールーの工場だけで「トレック」を生産する時代は終焉を向かえた。
そして、かつては
『ほとんどの自転車会社が極東メーカーで作ったモデルを販売しているが、これは同一モデルのコピーを販売しているものだ。
キャノンデールはオリジナルで、特許を保有する手作り、アメリカ国内の工場で。
新しいフレームは他社の「火であぶった弱いメタル」とは異なり、ハイグレード(高品質)のアルミ製で、航空機で使われているもの。
コネチカット州ジョージタウンの本社の開発部でCADを使って設計し、このデータをペンシルベニア州のベッドフォードやフィリップスバーグの工場にモデム経由で転送し、コンピュータ制御のハイテクレーザーで仕様どおりにアルミが切断され曲げられる。
これでキャノンデールは開発と製造のリードタイムを最小限に短縮できる。125000平方フィートのベッドフォード工場には23エーカーの土地があり、ここは自転車とウェアの主要生産拠点となっている。
ここはまたカスタマーサービスの拠点でもある。4万フィートのピッツバーグ工場は12エーカーで、関連商品やウェアの一部、自転車のサブアセンブリーを製造している。』
キャノンデール - Wikipediaより抜粋
とカッコイイ宣伝をしていたキャノンデールは紆余曲折を経て現在ではカナダの大手企業である「ドレル社」の傘下に入り、中国や台湾での生産へと移行してしまった。
そしてスペシャライズドともなれば、最初からOEM頼りのメーカーであり、あの名車「スタンプジャンパー」は日本の新家工業(東洋フレームとも)での生産だったと言われているし、現在ではメリダでの生産がメインであり、「メリダで生産しているのだから品質には自信がある」とスペシャライズド自ら言ってしまうほどである。

このあたりのOEM事情については書くことが多すぎるので別の機会にしたいと思う。

自転車の「勝ち組メーカー」と「負け組メーカー」はどこで分かれる?
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2014/10/winner-or-loser.html


さて、先ほど「非常にオイシイ」と言ったが、これはズバリ価格のことである。
日本でメリダの知名度が低く、お世辞にも人気があるとは言えない。
それは本国メリダや日本代理店のミヤタだって分かっていることだ。

15年以上前、まだ今ほどの地位を確立していなかったGIANTは、自社ブランドを売り込むべく、台数での勝負を図った。
そしていつしか品質の良さが世間に認められ、今では日本国内でもアメリカやヨーロッパメーカーに引けを取らないブランド力を持つことに成功したのである。

当然メリダも同じ戦略を取りたかったに違いないが、早々に日本法人を立ち上げたGIANTと違い、メリダジャパンから代理店制へ移ってしまったメリダは「暗黒のブリヂストン時代」を過ごすこととなり、欧州のような発展を遂げられないでいた。
ようやくメリダが日の目を見るようになったのは、ミヤタサイクルが販売権を獲得してから数年後のことだ。
(それは皮肉にも、ミヤタの販売力が大きかったというわけではなく、その逆だったからこそ成し得たことかもしれないが・・・)

もしメリダブランドにヨーロッパのような人気があるとしたら、どうするだろうか?
きっとミヤタは強気のプライスに打って出るだろう。
いわゆる「のれん代」というものだ。
逆にブランド力が高ければ、我々消費者は、「製品価値」以上のものを支払わなければならない。
憧れのブランドであれば、それでもいいのかもしれないが、台湾や中国に設計生産を丸投げした某ヨーロッパの老舗ブランドに大枚を叩くくらいなら、「メリダ」が作った「MERIDA」の自転車に乗るほうがスマートで賢い選択だと思っている。

「メリダ」が作った「MERIDA」の自転車

食品の産地偽装が各所で問題視される昨今、生産工場がはっきりしているというのは何より信頼へ繋がる。
そしてOEMで培った世界最高水準の技術を、ブランド代無しで手にできるのがメリダの「おいしいところ」だ。
中でも2015年モデルの中級グレードは、各メーカーが円安に押されて値上げを決行するご時勢にあって、非常にお買い得なのである。

今回の比較する車種は、「スクルトゥーラ(SCULTURA) 」と「ライド(RIDE)」という特性の異なる2種類だ。
ともにグレードは「400」だが、このグレードはアルミフレームという入門クラスでありながら、その性能は素晴らしいものがある。
メインコンポも「シマノ105」と、レースにエントリーしても申し分ないものだ。
どのくらいの性能を誇るかと個人的に言えば、95年のツールでインデュラインが駆った「ケラルライト」・・・
仮にこれを「SCULTURA 400」にそのまま置き換えたとしても、彼はV5を達成しただろう。
というのは少々大げさかもしれないが、フィクションサイクル店長が保有する愛車であり、以前サイクルスポーツ誌で満点を獲得したアルミ製「ピナレロ PARIS」より軽くて速いのは間違いない。

写真で見る「SCULTURA 400 vs RIDE 400」

まずはオールラウンダーの「SCULTURA 400」から。
上位機種のカーボンフレームとほぼ同じジオメトリーを継承したシルエット。
巧みにハイドロフォーミングされたフレームワークはメリダの技術力の結晶だろう。
剛性の振り分けも計算されており、トップチューブに比べダウンチューブは2倍ほどの太さを持つ。
これは最近の流行でもあるが、BB周辺やヘッドには剛性を持たせ、他の部分にはあえてしならせることにより、速さと快適さを両立させるといった手法だ。

次に紹介するのがエンデュランスロードの「RIDE 400」
ライドシリーズが登場したのは2013年と比較的新しい。
カタログでは「PAVE」と表記されているが、これは「石畳み」のこと。
つまりライドは「パリ・ルーベ」などの悪路レースを想定されて設計されているのだ。
スクルトゥーラと比較しても、リア三角がコンパクトに、そして細かくパイプが潰し加工してあるが、これが乗り心地の良さに繋がっている。
しかし、その恩恵が最大限に受けられるのは、やはり上位グレードの「RIDE 97」あたりであって、このアルミのライドは、非カーボンゆえのカッチリ感が残っているように感じる。

この2機種はコンポネート含め、非常に似た作りとなっているが、一番の違いはヘッドパイプだろう。
ライドのヘッドパイプはスクルトゥーラより20mmほど長いのだが、これがハンドルポジションにも影響している。
スクルトゥーラは一般的なレーサーサイズのパイプ長。

ライドはかなり長めとなっている。
GIANTでいうところの「DEFY」に似た雰囲気だ。

奥がライドのハンドルだ。
ステムとハンドルが同じものなので、当然ヘッドが長いライドのほうが20mmほどポジションが高くなっているのが分かる。

この2台の乗り味はカーボンフレームの両者より、かなり似通ったものがあるが、これはダウンチューブが共通だからかもしれない。
これは確認していないので推定だが、シートチューブ、ダウンチューブはまったく同じものと思われる。

 同アングルからのハンガー周辺の様子。
意外なことに、高剛性が売りのスクルトゥーラにはチェーンステーのブリッジが無いのに対し、ライドにはブリッジが付いているのが不思議ではあるが、剛性コントロールを狙ってのことなのかもしれない。
それともただフェンダーの取り付けに対応したいだけなのかも・・・。


ワイヤー類はすべて中通しされるため、ダウンチューブの一番下は出口になっている。
ここもまったく同じ工作だ。

チェーンステーの加工はライドはかなりこだわっているようだ。
かなり潰してあるのが分かるが、これが振動吸収に影響するのだろう。

シートステーも断面は薄い菱形状だ。

グレードを示す数字はともに「400」
2015年のメリダラインナップでは、4桁がカーボンフレーム、3桁がアルミフレームとなる。

なんとスクルトゥーラには、「UCI認定マーク」が貼られている。
これはなんとなく気分的にも嬉しい。
残念ながらライドには貼ってないようだ。

カタログの説明。
簡単に要約をまとめれば、
・スクルトゥーラは万能だけどプロ選手はリアクトに乗り換えてしまった。
・リアクトの剛性感はプロ選手も満足するほどすごい。
・よっぽど荒れた路面ならライドがいいよ。

というようなことが書いてある。
はっきり言ってどれが自分に適しているのかここから判断するのは難しい。

しかし今回の2機種の「400」グレードであれば比較的簡単だろう。

設計思想の差異から見る両者の得意分野は?

「SCULTURA 400」が適している場合
・とりあえずロードレーサーに乗ってみたい
・いずれはロードレースなどにも出てみたい
・パーツをカスタムして速いマシンに仕上げたい

「RIDE 400」が適している場合
・楽に早く遠くへ行きたい
・エンデューロやブルベなど長い距離を走るレースに出たい
・ロードポジションが何となくツラい

どちらも入門やステップアップに最適なマシンではあるが、その味付けや方向性が異なるため、迷った場合はこのどちらに当てはまるかを考えればよいだろう。
ちなみにフィクションサイクルのオススメとしてはスクルトゥーラに一票入れたい。
なぜかと言うと、万能なスクルトゥーラはセッティング次第で一応何でもこなすことができるが、ライドは「ハンドル位置が下げられないためロードレースでは厳しい」という唯一の欠点があるためだ。
そしてなにより、現在の店長の愛車が「スクルトゥーラSL」だからに他ならない。

気になる価格は以下の通り。

メリダ2015年モデル 「SCULTURA 400」
フィクションサイクル標準価格 ¥139,900(税込)

メリダ2015年モデル 「RIDE 400」
フィクションサイクル標準価格 ¥159,900(税込)

装備で異なるのはホイールで、ライドは「フルクラムレーシング」が採用されているが、これが2万円の差額に直結するかと言えば微妙だ。
「Fulcrum Racing Comp」というホイールセットはメリダの完成車向けに専用で提供されており、市販品とは異なる。
スクルトゥーラに装着されている「ALEXRIMS COMP24」も実はメリダ専用品だが、これはこれで悪いものではない。

しかしやはりホイールが多少重いのか、出足の悪さに不満は残る。
そして唯一コンポの中でシマノ以外を採用する、あのレスポンスの悪いオリジナルのブレーキキャリパー。
逆にここさえ改善してしまえば、はっきり言って20万円以上のレーサーと互角に渡り合える素質を持っていると断言してもいいだろう。



ということで、円安のこのご時勢に14万円以内で買える自転車としては、スクルトゥーラ400は今年最強の1台かもしれない。
なんと素晴らしい時代になったもんだと関心しつつも、過去の名車たちに心の中で合掌したくなるのは、なんとも複雑な気分である。

「SCULTURA vs RIDE」ジオメトリー比較チャート

最後にこの2機種のジオメトリー比較チャートを載せておく。
やはりヘッドパイプのサイズ以外に大きな違いはない。
フレームサイズを選ぶコツとしては、身長が2つのサイズにまたがった場合は小さめを、3つにまたがった場合は真ん中をチョイスするのがいいだろう。
例えば、身長が165cmなら47cm、178cmなら52cmといった具合だ。

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