2014年10月1日

自転車の「勝ち組メーカー」と「負け組メーカー」はどこで分かれる?

今回なぜこのようなテーマを書こうかと思ったかと言うと、面白い“ミス”を発見したからだ。

フィクションサイクルに入荷してきたいつも通りのGTの箱。
中身はもちろん自転車だ。

車種は入門クラスのアグレッサー3.0
箱の側面には
「CYCLING SPORTS GROUP」
「WWW.GTBIKES.COM」
「DOREL」
と製造元のロゴが並んでいる。


さっそくサクサクと組み上げ、次の自転車に移る。
同じくGTの入門クラスのパロマー。
当然同じメーカーなので、箱の側面にはGT・・・
と思いきやURLが「WWW.CANNONDALE.COM」
まさかのキャノンデールである。

これは明らかなミスプリント

ちなみにこちらが先日入荷したばかりの本物のキャノンデール2015の箱


キャノンデールといえば、かつて誰しもが憧れた「HAND MADE IN USA」ブランド。
極太のアルミフレームに、美しくそしてワイルドにサンダーで削られた溶接跡、深々とした真紅のカラー。
こんなイメージがまだ脳裏に焼きついている人も多いだろう。
しかし繁栄を極めたのも1990年代までで、2000年代にはキャノンデールという会社は消滅。
現在ではその「キャノンデール」というブランド名が生き残っているだけだ。

コネチカットで生まれた小さな会社は、やがて創業者ジョー・モンゴメリーの元を離れ、ペガサスの傘下を経て、そして世界的にも大きなカナダのドレルインダストリーという会社の扱うブランド名のひとつとなった。
そのドレルの自転車事業部である「サイクリングスポーツグループ」は品質の高さでも知られ、品質コントロールの難しい中国生産においても、安定した商品を提供し続けている。

しかしそうは言ってもやはり中国製。
このようなプリントミスですら、彼らが自発的に改善策を打ち立てることは期待しないほうがいいだろう。
常に本国の人間が立会い、監視し、間違いがあった場合は指摘する。
この繰り返しが求められるのだから、やはり中国生産は難しい。

この箱を見ながら、そんなことを想像するのは、長く自転車屋をやっている人間くらいだろう。
一般のお客さんにとって、そんなことはまったく関係ないのだ。
彼らが欲しがるのは、最高にカッコイイ「キャノンデール」の自転車なのだから。


企業の最大の資産は「ブランド名」

たしかその昔、誰かから聞いた言葉だが、まさにその通りだと思う。
特に自転車業界ではその傾向は非常に強いように感じる。
言い方は悪いが、ブランドさえあれば彼らはゾンビのように何度でも蘇るのだ。

ブランド名を残すことが、「勝ち」なのか「負け」なのかは分からない。
しかし商業的には「負け」と言い切っていい。
無名でありながらも長々とOEMでシェアを伸ばし、健全に存続している企業のほうが、その理論で言えば「勝ち」なのだ。


自転車メーカーが高い理想を掲げ、信念に基づいて商売を成功させた事例は皆無に等しいだろう。
誰しもが知っているブランドがどのような状態にあるのかを調べてみよう・・・
と思ったが、廃業や倒産があまりに多いため、参考になりそうなサイトをいくつか紹介させて頂く。

---TR---
【歴史探訪 自転車メーカー「GT」】
http://lovebike.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/gt-b525.html

【歴史探訪 自転車メーカー「Gary Fisher」】
http://lovebike.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/gary-9c93.html


---おこちゃまといつもいっしょ---
【業界の基本:わたしの自転車はどこでつくられたの?・・・】
http://evc.cocolog-nifty.com/okochama/2009/04/post-7aa2.html

【ブランドの基本:Schwinn シュウイン】
http://evc.cocolog-nifty.com/okochama/schwinn-brand.html

【索引:ドレル Dorel Industries】
http://evc.cocolog-nifty.com/okochama/dorel.html

【キャノンデールジャパンのキャノンデールUSA記載】
http://evc.cocolog-nifty.com/okochama/2010/09/usa-9e83.html


---サイクルショップ金太郎---
【自転車メーカーのOEMについて】
http://3196kintarou-blog.com/blog-entry-1530.html


さっきも言ったが、このような内情は一般ユーザーにとってはあまり関係がない。
せいぜい知ったところで、ウンチクネタにするくらいだろう。
そして自転車店の関係者もこの話を得意げにお客に語ることはないだろう。

フィクションサイクルが考える、売れる自転車の3つの条件がある。

【ブランド】×【デザイン】×【カラー】

これがその条件だ。
ハイクラスやよっぽどのマニアは別として、全体の95%の購入者が重要視するのはここだけで、あとはこの条件を満たした上で、価格と相談となるのだ。

ここに引き合いに出して申し訳ないが、例えばルイガノというブランドがある。
最近でこそ人気は多少冷め気味にはなったが、かつての人気はとてつもないものであった。
中身的には、問屋であるアキコーポレーションが日本向けに企画し、台湾や中国で製造した他のOEM自転車となんら変わらないのだが、ブランドの響きとロゴのカッコ良さがウケてヒットしたのだ。
もちろん、自転車としても、シマノのアッセンブル率が高いことや、生産元と思われるフェアリー(菲力)の仕上がりが良く、販売側にとっても非常に売りやすい商品だった。

そんな時にいちいち「これはカナダとはあまり関係のない、日本企画の台湾生産です」という野暮ったいことを言う自転車屋はいないだろうし、いたとしてもアキと販売契約が結べない自転車店主のヤッカミの類だろう。

さてこの場合、誰が得をしたのだろうか?
一番はアキとして、OEM先のアジアの工場、そして名前を貸したカナダのルイガノ・・・
そして購入客は「自分はルイガノの自転車を買った」と満足していることだろう。

それぞれが利益を手にしているが、この中に生粋の「自転車メーカー」はいない。

これが今の自転車界の縮図だ。
「メーカー=製造元」の時代はとっくに終わった。
これからは、圧倒的な生産力、開発力、ブランド力、そしてぶっ飛んだ発想をもったメーカーが「勝ち組」として生き残り、反対にマーケットに対する主導権を失ったメーカーは「負け組」として容赦なく買収の餌食になるだろう。
果たして国内だけをターゲットにしている日本メーカーは、このまま生き残ることができるのだろうか?
もしも“中国で安く作って利益を上げる”ということしか考えていないようであれば、すでにその足元は崩れ始めているのかもしれない。

2 件のコメント:

  1. ルイガノやGIOSなどはともかくきちんと設計を自社で行なっているか否かが大事だと思いますよ
    DE ROSAとPinarelloやCOLNAGOの違いのように

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  2. 1991 SE2000と1995 SUPER V 2000を所有しています。
    2022のキヤノンデールは、残念ですが価値が無いと思う!
    バックグランドが無いから

    返信削除

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