このフィクションサイクルをリアル(現実世界)で知っている人から、「よく読んでますよ、あの記事面白かったです」と応援の声を頂くのだが、そのほとんどが自転車店店主などの、いわゆる身内の人間だ。
つまり自転車店が個人に情報発信しているというより、自転車店が自転車店に「あるあるネタ」を提供しているような感じでもある。
ということで、今回もこれまた一般人にはまったく関係の無さそうな話をしてみたい。
廃棄自転車はどこへ行く?
もし廃棄がないのであれば、たった10年で1億台近くになり、自転車保有台数統計がとんでもないことになるだろう。
ちなみに日本の自転車保有台数は数年前の統計で約7000千万台で、一世帯あたりに1.3台ほど自転車がある計算となる。
この保有台数が緩やかに上昇してはいるものの、ほぼ横ばいになっている理由はもちろん廃棄があるからだ。
自転車を買うという行為は記憶に残りやすく、ネット上にも様々な情報があふれているが、購入と同時に廃棄された自転車のことなど、次の瞬間にはほとんどが忘れ去れるのだろうし、個人が手放した自転車を追跡することは不可能に近い。
では新車を購入した際に、自転車店に廃棄を依頼した自転車はどうなるのか?
個人の自転車店のケースをネタバラシも交えて考えてみよう。
①中古車として売れるか売れないかをチェック
自転車店の店主は商売人であるため、どのようにすれば利益が生み出せるのかを優先的に考えている。
もし廃車がまだまだ綺麗で実用的であるならば、ちょっと手直しして店頭に中古車として並べるだろう。
もちろん、中古品を扱わないお店もあるし、古物商の資格を持っていなかったり、はたまた中古車を売ってトラブルに巻き込まれた苦い経験のある店主は手間を惜しんで本当に廃棄するかもしれない。
このトラブルというのは防犯登録にまつわるケースが多く、店主がズボラで手続きが適当だと、新旧の所有者で思わぬ事件に発展したりもするので、廃棄の際はその点を注意してもらいたい。
②使えるパーツを部品取りとして不要な部分を廃棄
これまた中古車の延長ではあるが、事故車や傷みの程度が激しい場合は、使えるところだけ抜き取って処分することになる。
そしてバラバラになった自転車は自転車回収業者(金属回収業者とは違う)も嫌がるため、そのまま金属資源として、その筋の業者に回収してもらうか、コンプライアンスに忠実なお店なら行政が指定するリサイクル処分場に持ち込むだろう。
この場合は自転車では無く、鉄クズとして扱われるため、自転車としてはここで終了となる。
最近ではパーツを抜き取りできるような立派な自転車も少ないため、そのままの状態で資源リサイクルに出すケースも多くなってきている。
③自転車回収業者に委託する
最近ではいろいろと厳しくなってきたため、「回収のおじさん」も巡回の頻度が減ってきたように思う。
しかし完成車を好んで引き取りに来る業者はまだまだ存在する。
彼らの目的は海外輸出であり、日本では価値の無い廃棄自転車を海外に転売するために、値の付きそうな自転車を常に探し回っているのだ。
以前は高級車であれば、多少キックバックをくれたりと、これを楽しみにしている自転車店もいたが、今では買い取りはスクーターやカブなどのオートバイだけで、買取となる自転車は少ない。
例外として、電動アシスト自転車だけは、数千円の値が付いたりすることがあるが、充電器が無いと減額されるなど、再販する気マンマンである。
発展途上国へ旅立つ廃棄自転車たち
自分はその現場に立ち会ったことなどないのだが、廃棄自転車をギリギリまで満載しようというのだから、それこそコンテナバンニングは神業的な収納技術となるだろう。
噂によれば、例として40フィートコンテナが日本への輸入時にフル満載250台(非分解)が限度だとして、輸出時には最低でも500台が押し込まれ、最大では2000台も可能というから恐れ入る。
参考サイト
http://dx-mixmetal.d2.r-cms.jp/season_detail/
気になる輸出先としては、10年以上昔にはあの有名な「万景峰号」で北朝鮮に送るという話も良く聞いたが、最近では東南アジアが主流のようだ。
タイ、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、パキスタン、インド・・・
中にはアフリカ行きもあるようだが、日本ブランドの自転車が高く売れるのはやはりアジアの発展途上国だと言う。
理由としては、彼らの生活水準が上がり、ネームバリューの強い日本製を好むらしい。
フィクションサイクルにも先日ベトナム在住の方から突然電話があり、「メイドインジャパンの自転車が欲しいから送ってくれないか?」という無茶なオファーが来たことがあった。
驚くことに、彼が要望したのは高価なスポーツ車などではなく、日本独自のいわゆる「ママチャリ」であり、特に重要視していたのが「MADE IN JAPAN」のステッカーが貼ってあるかということだったのだ。
その彼はブリヂストンの名前をしきりに口にしていたが、ブリヂストンの婦人型はほとんどが中国の常州や委託工場の天津で生産されていることを説明し、純国産ママチャリはパナソニックの「シナモン」1機種しか存在しないことを伝えると、少し考えるという返答を最後に連絡は途切れてしまった。
しかし彼から得た有意義な情報としては・・・
・日本ブランドの自転車が人気がある
・ママチャリはスタイリッシュで実用的だという認識が広がっている
・日本の防犯登録や○○輪店や○○サイクルのステッカーがステータスになる
という、日本の自転車屋にとってなんとも予想外な内容であった。
ベトナムからのアクセスが多いフィクションサイクルのサイト
最初は理由がイマイチ分からなかったが、アクセス解析をしてみてようやく理由が分かってきた。それはとあるベトナムのハノイにある中古自転車販売店のサイトにリンクされていたからなのだが、そのリンク先はサイクルベースあさひのオリジナル電動アシスト自転車の「エナシス」に関する解説記事だった。
大手チェーン店ではあるものの、PB商品は情報に乏しく、この中古販売店はこともあろうに、「エナシス」の商品説明としてフィクションサイクルの記事を当てにしたのだ。
関連記事
あさひオリジナル電動「enersys(エナシス)」
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2012/10/enersys-airpur.html
それ自体は別に構わないのだが、個人の書いたインプレ記事である上に、サイトの前提として「フィクション/架空」とうたっているのだから、もう少しマシなリンク先があっただろうに・・・と、勝手に心配になってしまう。
NGOC AN BIKE
http://muare.vn/threads/40/2139882/
しかしこのページを見て驚くのは、本当にそのまま日本の自転車が並んでいることだ。
見慣れた自転車に見慣れた防犯登録、見慣れないのはあまりにミスマッチな背景くらいだろう。
各社で共通化されたバッテリーの不思議
そんなワケあるはずがない・・・電動アシスト自転車というのはバッテリーとユニットの綿密な連携で制御されていて、ましてや他メーカーとの共通バッテリーなどできるハズがない。
というのが定説であったが、どうやらそうでもないらしい。
この中古自転車の販売店のサイトにある写真を比較すると、パナソニックの「VIVI」、ヤマハの「PAS」、ブリヂストンの「アシスタ」、そしてサイクルベースあさひの「エナシス」までもが、同じカタチのバッテリーで駆動しているようなのだ。
さすがにサイズの違い過ぎるサンヨーの例は見つからなかったが、上記の4機種に同じバッテリーが載るとは、マウント形状を考えたってまず不可能としか思えない。
もしこんなことが簡単にできるなら、日本の中古バッテリーのリサイクル販売業者がとっくに手がけていそうだが、国内で見かけたことは無い。
しかし自転車の細部を良く見れば、交換されているのはバッテリーだけではなく、ハンドル上部に取り付けられたLEDライトと何かがセットになった装置、それにハンドルグリップにはスロットルのような形状のものが取り付けられている。
反対に純正の前照灯は取り外され、手元のコントロールスイッチも見当たらない。
改造内容としては、おそらく自走式にモディファイされているのだろうが、やはりなかなかの技術であり、アイデア賞でもあると思う。
一般的には、モーターなのだから電源を直結すれば走るだろう程度の認識かもしれないが、電動アシスト自転車に用いられているブラシレスモーターやステッピングモーターといった高度な制御プログラムを必要とするモーターは、ただ電気の強弱だけで回転が調整できるとか、そんな原始的なものではないのだ。
一体どんな構造なのかは知らないが、この自転車がいくらで売られ、誰が買って、どこで走るのか・・・
非常に興味をそそられる内容だ。
フィクションサイクルでも、機会があれば現地視察に行こうと思っている。
http://muare.vn/threads/40/2139882/
どうでもいいことだが、この自転車販売店が使用しているカメラはかなり高価なレンズなのだろう。
被写体深度もバッチリでい良い写真なのだが、なぜか前輪が見切れてしまっているショットが多いのはナゼなのか気になる・・・
電動アシスト以外にもBSロードマン、ビアンキ、ルイガノ、そして価値があるのか無いのか、「Designed in Japan」のドッペルギャンガーやブランド企画商品なども多数扱っているようだ。
そのほとんどに防犯登録(東京都がメインか?)とTSマークが貼ったままとなっている。
アングル的に確実に日本で販売されていた痕跡を匂わせるショットもあり、冒頭にも書いたように、やはり「日本」のブランドには一定の支持層がありそうだ。
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