2015年7月24日

「ICAN」カーボンホイールラインナップの分析

海外や国内、現物を確認できないネット通販で失敗しないために、できる限り情報を収集するのはお買い物の鉄則である。
特に俗に「中華カーボン」と呼ばれるキワモノの場合は。

カーボンホイールをAmazonで買ってみよう その①
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/07/amazon.html

カーボンホイールをAmazonで買ってみよう その②
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/07/amazon2.html

カーボンホイールをAmazonで買ってみよう その③
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/07/amazon3.html


今回は「ICANIMUST」という中国メーカーからのカーボンホイールを取り寄せるためのシミュレーションをしてみたいと思う。

まずは正面から

http://www.icanbikes.com/

なかなかよく出来たHPである。

ちなみに「ICAN」というブランドは存在するが、「IMUST」というブランドは存在しない。
「IMUST」は2012年頃に「Miracle bike」というブランドを扱っていたが、現在は「ICAN」を販売しているようだ。
さらにマニアックな話になるが、中華カーボンの謎ということで掘り下げてみたい。
といことで、アリババのIMUSTの一覧よりちょっと画像を拝借。

2012年モデルの「MIRACLE」のフレーム (フレーム品番:MC053)

そして2年後

2014年モデルの「ICAN」のフレーム (フレーム品番:MC053)

実はフレーム品番「MC053」は、あのスコットの「Foil」のクローンフレームのことである。
(ただ完全なクローン(同じ金型)ではないことはシートポストの固定方法が異なることから明らかだ。そもそもFoilは台湾生産だと言われているので、ただ似せて作っただけ、と言うほうが正しいかもしれない)

2011「Scott Foil」(本物)
※google画像検索より

つまりこれがどういうことかと言うと、あくまで想像の範囲ではあるが、このIMUSTという会社がいろいろ手を変え品を変え商売しているのであって、“ICANというブランドに製造メーカーとしての実態があるわけではない”という説。
もしくは反対に、“ICANがノーブランドを広く売るためIMUSTという名称を流通経路にしている”説。

それと、IMUSTというブランドは存在しないと書いたが、「IMUST」のトレードマークは、
「Shenzhen Qiji Carbon Fiber Technology Co., Ltd」というところが所有しているらしい。
まさに謎ではあるが、もしかしたら数年後にはIMUSTブランドが誕生するのかもしれない。

まあとにかく中国ブランドは“有形無形の謎の複合体”ということは間違いなさそうだ。

次に内部に潜入

Shenzhen Imust Carbon Technology Co., Limited




気になるホイールは完全ハンドメイドの様子。
写真はICANのサイトよる。
http://www.icanbikes.com/html/Round/Road_wheelset/151.html

この写真の真贋はまったく不明である。
このリム組では量産は不可能にも思えるが、とりあえず雰囲気はこんな感じだろう。

参考までに、こちらは台湾でのリム組みの様子。

熱心に情報発信しており、YouTubeやFBにもアカウントがある




リムの真円度と平坦検査。
動画のクオリティの低さが逆に親近感を与える気がする。

ICANのラインナップ調査

日本のアマゾンで購入できるものは、彼らの提供する商品の一部に過ぎない。
今回は700Cのロードホイールに絞ってまとめてみたい。

カーボン製品は金型が肝であり、構成するカーボン素材によって外観や質感にバリエーションを持たせることができる。

■リム■
まず彼が製造可能なリム形状から(日本アマゾン取り扱いのみ)

数字:リムハイトmm、C:クリンチャー、T:チューブラー、カッコ内:リム幅

38mmハイト
  38C (リム外幅23mm、リム内幅16mm)
  38T (リム外幅23mm)

40mmハイトワイドリム)
  40C (リム外幅25mm、リム内幅17mm、最大幅27mmワイド)
  40T (リム外幅25mm、最大幅27mmワイド)

50mmハイト
  50C (リム外幅21mm、リム内幅15mm)
  50T (リム外幅21mm)

50mmハイト(23mm)
  50C (リム外幅23mm、リム内幅16mm)
  50T (リム外幅23mm)

56mmハイトワイドリム)
  56C (リム外幅25mm、リム内幅17mm、最大幅27mmワイド)
  56T (リム外幅25mm、最大幅27mmワイド)

86mmハイトワイドリム)
  86C (リム外幅25mm、リム内幅17mm、最大幅27mmワイド)
  86T (リム外幅25mm、最大幅27mmワイド)

最近の25Cタイヤ対応のため、モデルによっては23Cの装着に適していないものがあるので注意してもらいたい。
リム内幅 x 1.4 = 最低タイヤ幅」という数式に当てはめれば、ワイドリムは25C以上の装着に最適化されていると思われる。
それと個別のリム重量だが、さすが中国メーカーだけあって表記差がありすぎて信憑性などまったく感じさせないレベルのため割愛させてもらった。


■ハブ■
次に重要になるハブにおいてもアップグレード可能なものがある。

Powerway R13
  フロント:シールドベアリング2個 重量:   75g+/-3g
  リア:     シールドベアリング4個 重量: 219g+/-3 g

Powerway R36 (カラー:Black / Red)
  フロント:シールドベアリング2個 重量:   65g+/-3g
  リア:     シールドベアリング4個 重量: 208g+/-3g

NOVATEC
  フロント:シールドベアリング2個 重量:   73g+/-4g
  リア:     シールドベアリング4個 重量: 216g+/-4g

DT Swiss 240s (Amazon選択不可)


ノバテックはパワーウェイより重量的に不利に見えるが、ハブは軽さより剛性が重視されるため、やはり名の通った製品が選択できるのは良い。
ただ、ノバテックの製品一覧に似たようなハブが存在しないため、重量含め真意のほどは不明だ。
アップチャージは7月現在、現地レートでR36が約90ドル、ノバテックが約60ドルだ。


■スポーク■
話題のSAPIMの選択ができるが、価格にダイレクトに反映してしまうので、ここは迷いどころだろう。

CNスポーク 

SAPIM

・Pillarスポーク (Amazon選択不可)

サピム採用商品にはロゴステッカーが貼られるようだが、これもまた現物を見ていないため分からない。
サピム変更のアップチャージは7月現在、現地レートで約120ドルだ。

フィクションサイクルのイチ押しチョイスは?

ここまで選択肢が広いと迷ってしまいそうだが、フィクションサイクルのオススメは50mmハイトのクリンチャーホイールだ。
その理由は単純にカッコイイから・・・なのだが、せっかく安いホイールを注文するのだから、見た目重視、軽さはそこそこ、そして使えるものでなけれなならないと考える。

①チューブラー vs クリンチャー
まず大前提ではあるが、このホイールを決戦用にするにはちょっと厳しい。
どちらかと言えば、練習用で見栄を張りたい方に使ってもらいたいので、維持費の安いクリンチャーがオススメだ。
もしレースでそこそこ頑張りたいというのであれば、あと2倍ちょっとの金額を出してファストフォワードのチューブラーまで頑張ったほうがいいだろう。

②ノーマルリム vs ワイドリム
最近の流行である25Cタイヤとエアロ効果の面で相性が良いとされるワイドリム。
最大の弱点は重くなるということだ。
チューブラーカーボンリムでは単体重量300gを下回ることが可能だが、クリンチャーでは400gを切ることが厳しい上に、ワイドリムと25Cタイヤの組み合わせは更なる重量増となってしまうため、ノーマルリムを選択するのが吉だ。

③38mm vs 40mm vs 50mm vs 56mm vs 86mmハイト
この中で実用的なのは38mm~50mmだろう。
86mmは重量増や横風の影響が大きいため、見た目以上のメリットはない。
そもそもハイトが高すぎる場合、カッコ良さを通り過ぎてゲテモノの域に達してしまうので、ロードレーサーのトータルバランスを考えれば、50mmが限界だ。
ワイドの40mmを除けば、38mmか50mmなので、どちらかを選択すれば良い。
見た目重視であれば、アイオロスやボーラ、C50で人気の高い50mmをオススメする。

④Powerway R13 vs R38 vs NOVATECハブ
パワーウェイは台湾系のBitex社のものであり、品質的にはノバテックと大差ないと言われている。
このICANの位置する深センは世界中のハブメーカーのOEM工場の巣窟であり、どれを選んでも割と高品質なのは間違いない。
ひとつ気をつけなければならないのが、R38はストレートプルスポーク仕様のため、補修を考えれば避けたほうがいいだろう。

⑤CNスポーク vs SAPIMスポーク
今や手組みスポークの代名詞にもなっているサピム。
その中でもCX-RAYは丈夫さと軽さを兼ね備えた高性能スポークだが、そのお値段も1本あたり540円と破格。
トータル1万円以上のアップチャージも止むを得ない気もするが、CNのMACエアロもかなり良いスポークなので、軽さを追求しなければサピムの必要性はかなり低いだろう。


実際の購入とレビューについては次にまとめてあるので読んでもらいたい。

カーボンホイールをAmazonで買ってみよう その①
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/07/amazon.html

カーボンホイールをAmazonで買ってみよう その②
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/07/amazon2.html

カーボンホイールをAmazonで買ってみよう その③
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/07/amazon3.html

ICAN 「50Cカーボンホイール」実走インプレッション
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/08/ican-50c-impression.html


※記載した商品情報は間違っている可能性がありますので、不明な点は出品者に確認してください。

※万が一、記載した通販サイトで注文した商品でトラブルが発生しても、フィクションサイクルはいかなる場合も責任を負いません


2 件のコメント:

  1. はじめまして。
    よく読んでますよ、非常に面白くて、他の記事も読み漁っています。(今も別端末からアクセス中w

    ICAN BIKESは2のつく板でも多少名が出てましたね。まさかAmazonで出品があるとは知りませんでした。
    まあAmazonは戦車も出品するほど寛容だから、流石だなぁと。
    それはさておき。

    この記事も興味深いのですが、少し惜しい点がいくつか散見されます。
    まずリム重量は、素材、リムハイト、リム幅、肉厚で決まります。
    重視しなければならないのは、「どこに重量が偏っているか」です。
    悲しいかな、クリンチャーがチューブラーにいつまでも重量で勝てないのは、タイヤを引っ掛けるフック部に肉厚が必要だからです。
    これはFICTION店長さんもご存知だと思います。
    重要なのはもう1つの方。

    もう1つ、なぜワイドリムが出てきたのか?
    これは材力の観点から簡単に結論が出せます。
    同じリム幅、リムハイト、素材を使う場合、VシェイプよりもUシェイプ、四角断面の方が強度や剛性を高く出せるからです。
    他所の中華カーボンリムでも、強度や剛性のためにわざと重くしたリムも存在します。
    フレームならば、TCRが楕円形から四角にダウンチューブの形を変えたのも、これが理由の1つです。
    ワイドリムが空力良い云々は後付けの理由だと考えています。
    Vシェイプでも積層変更や素材のグレードで剛性や強度の引き上げは可能ですが、限度があります。
    行くとこまで行ったら、今度は設計から見直しです。

    ……と、少々のツッコミはまあスルーして頂いて構いませんが、単純にICANのリム良さそうですね。
    試しに1本行こうかな(笑)

    では、失礼します。

    返信削除
  2. いらっしゃいませ
    久々のお客様ということで返信させて頂きます。

    ワイドリムに関する考察ですが、非常に的を射たご指摘だと思います。
    Uシェイプの剛性面での優位性は今後のディスクロードの台頭によって更に加速されるものと予想しています。

    ここからは私の見解ですが、なぜワイドではなくノーマル幅を推奨するかという理由です。
    まず、当店では複数のリムのノーマルとワイドを在庫して重量を測定しましたが、やはりワイドは全体的に若干重たくなる傾向にあります。
    強度と軽さのバランスについてはいつの時代でも自転車に付いて回る課題ではありますが、強度的に不満が無い場合は、軽さを優先すべきだと考えての選択です。

    そしてワイドリムがもたらすエアロ効果についてですが、これは極々限定的なものであり、リムをワイドにするメリットは別にあると思われます。

    https://youtu.be/2x6saXUdA9o
    ここに動画を貼りますが、25cタイヤを履くにはワイドのほうが有利なのは明白です。
    しかし、ホイール互換の問題もあり、外幅23mm以上になってくればアジャストの範囲から外れブレーキセッティングをやり直す必要が出できます。

    以上の点から、トータルバランスと互換の利便性を考慮し、ノーマル幅のリムを推奨しております。

    またオマケの情報ではありますが、当店で在庫しているICAN38Cの38mmクリンチャーのリムは436gという数値が出ておりますが、これはアルミ軽量ホイールのキシリウムSL2002の実測436gとまったく同じ値だったということも付け加えておきます。

    では、ゆっくりご覧ください。

    店長

    返信削除

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