2014年2月18日

SRAM 1:1アクチュエーションレシオにまつわる多くの誤解

「スラムのリアディレイラーはワイヤー引き量が1:1です。これは例えばワイヤーを1mm引っ張ると、Rディレイラーのプーリーケージは横方向に1mm動きます。ちなみにシマノは1:2なので2mm動くことになりますので、互換性はありません」

この上記のもっともらしい回答、どこが間違っているところはあるだろうか?


答えは“すべて間違い”である。


たしかに、すべて間違いだと言い切るのは少し意地悪かもしれないが、これが正しいと思っている人は実に多い。
おそらくプロショップにおいても、すべて正しく把握しているメカニックはごく少数だろう。

では順番に誤解を解いていくとして、まずそもそもスラムの「1:1Actuation Ratio(Exact Actuation)」とはなんなのだろうか?

When we launched our road technology from scratch we reapplied our MTB proven SRAM 1:1 actuation ratio (shifter cable travel : derailleur movement) for 10 speed rear shifting. EA helps to simplify/stabilize the uneasy act of balancing rear derailleur hanger design, tight cog spacing and exact cable tension. The result: the easiest index shifting system to set up and it stays that way.


はっきり言ってまぎらわしい。
「shifter cable travel : derailleur movement=ワイヤーの移動量:ディレイラーの動き」
とスラム自ら書いているのだから、一番上の回答が正解に見えてしまうが、本当に強調したいのは「A=B=C」の部分であろう。

ABCがすべて同じ数値、つまり「正確な動作=Exact Actuation」なのだ。
さらに簡単に表現するとこうなる。
例えば10速の「1:1Actuation Ratio」の場合

1:1:1:1:1:1:1:1:1

意味が少し分かりにくいかもしれないが、つまりすべてのギヤ歯の間隔を正確に一定の距離をディレイラーが移動するということである。(1が9個なのは、10枚ギアの間隔は9だから)

「これは当たり前のことではないのか?」と思う人も多いかもしれないが、実はRDを等間隔に正確に動かすのはかなり難しい。なんと言っても、あの世界のシマノや大御所のカンパニョーロですら出来ていないことだから。

Fig.4は、トップ位置からのワイヤの引き量に対するガイドプーリーの横方向の位置変化量です。ワイヤの引き量に対してysの動作が直線ではなく、微妙に曲がっています。ロー側に近づくほど、ysの動作が鈍くなり、ワイヤを余計に巻きあげないと変速しない!ということがわかります。Fig.5も同じことを示していますが、こちらはプーリー位置ysの変化に対するワイヤ引き量の変化の割合が、プーリー位置でどのように変化するかを示しています(実は単にFig.4の微分値の逆数)。ワイヤを引かなければならない量がロー側になると段々増えていくというものです。

ワイヤ引き量に対するプーリー位置の関係(RD-6500)

CBNのサイトでGlennGouldさんという方が驚くほど精密に分析されていたので紹介する。

スラムのRD移動量が完璧な直線なのに対して、他メーカーは微妙ながら曲線になってしまっている。
これでは正確に変速できなそうだが、シマノは別の技術で対応しているため特に問題はないとの事。
しかしこれを知ってしまうと、あらためてスラムの開発力に感動するしかない。
ちなみにシマノの別の技術というのは、誰しもが名前だけは聞いたことがあるだろう「UG:ユニグライド、HG:ハイパーグライド」システムを支える「ガイドプーリー」である。
詳しくはヤフー知恵袋のこちらを参照してほしい。
detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1132223576

これもウンチクの範疇だが、ディライラーの語源は「ディレイル」
de「分離」+rail「レール」+er「装置」=「脱線させる装置」である。
完璧に精度が出されていてはレールから車輪を脱線させるのは至難の業。
「では車輪をグラグラにしましょう」という発想から、シマノが変速性能で世界No.1と言われるようになったのは実に面白い話であると思う。

では実際はどのくらいワイヤーの動きに対してRDが移動するのかを後半で検証してみたいと思う。

後半(本業が忙しいため後日掲載予定です)




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