2016年4月2日

電動アシスト車のバッテリーを分解してはいけない理由

リチウムイオン二次電池の安全で正しい使い方

01.電池を高温になる場所に放置しない
02.電池を熱源のそばに放置しない
03.取り扱い説明書を読む
04.電池を濡らさない
05.電池は決められた充電器、ACアダプターで充電する
06.電池は充電器や機器に正しく接続する
07.電池を直接電源コンセントやシガレットライターに接続しない
08.電池は高温になる場所での充電はしない
09.電池は火中に投入しない
10.電池はショート(短絡)させない
11.電池に強い衝撃を加えない
12.電池に釘を刺したり、踏みつけたりしない
13.電池に直接ハンダ付けしない
14.電池を電子レンジや高圧容器に入れない
15.熱がこもる場所でのリチウムイオン二次電池の充電はしない
16.電池は分解、改造しない
17.長い時間使用しない時は、電池を機器から取り出す
18.電池を乳幼児のそばに放置しない
19.電池を乳幼児やペットに取り扱わせない
20.使用時間が極端に短くなった電池は使用しない
21.電池の異常に気づいたら使用を中止する
22.電池が液もれしたら火気から遠ざける
23.電池の模造品(にせもの)や改造品に注意
24.電磁調理器の上に置かない
25.膨れた電池を無理やり機器に装着しない

電池工業会 http://www.baj.or.jp/safety/safety16.html

われわれの身近な存在であるリチウムイオンバッテリーを取り扱うための注意事項は非常なほど多岐に渡る。
それもそのはず。
もし、使用方法を誤れば最悪の場合・・・、死ぬ

これは別に脅しでもなんでもなく、実際にそういったニュースを聞いたことがあるだろう。
多くは海外のケースではあるが、危険なものに違いは無い。

なぜ今さらこんな警鐘染みたことを言うのかといえば、フィクションサイクルに来たお客さんが発した言葉が原因だ。

この電動のバッテリー、中身だけ交換して使えるよね?自分ハンダ付け得意だしさ

残念ながら、ここ数年の技術革新のおかげで、セルをハンダで接合しているバッテリーなど皆無となっている。
だが、一般の消費者の認識は、ただの大きな二次乾電池のイメージのままなのだろう。

鉛バッテリーから始まり、ニッカド(ニッケルカドミウム)→ニッケル水素→リチウムと、その進化とともに、エネルギー密度も高まってきている。

エネルギーというのは、常に安定したものではない。

例えば、蓄えたエネルギーを100万円の現金としよう。

一年間でこの100万円を使うとして、一日あたり約2700円
ちょっと贅沢できる気がしてくる。

では1時間で使い切ってみよう
これはもはや「ザギンでシースー」どころの騒ぎではない。

ちなみに高級腕時計を買うなどという選択肢は、資産の貯蓄にあたるので消費とは見なさない。
そうなれば、残る手段は「強いインパクトを伴う何か」になるだろう。
このように、蓄えられたエネルギーが制御されずに放出された場合、それは爆発物同然の凶器となるのだ。

電動アシスト自転車の場合は、バッテリーケースの大きさがここ15年ほどあまり変化していない。
そのため、エネルギー密度が高まっているという認識があまりなく、今回のように安易に分解を試みる人たちが出てくるのだと思う。

リチウムイオンバッテリーの中身はどうなっているの?

危険だと分かっていても、どうしても分解してみたい気持ちは理解できる。
ブラックボックスの解析は一種のロマンなのだ。

しかし、相手は気難しいリチウムイオンバッテリー。
誰でも気軽に分解できるものではない。

そこで今回はフィクションサイクルが、そのロマンチストの代表として、中身の確認を行うことにした。

※特別な許可を得て分解を行っています。決してマネしないでください
※注意喚起が目的であり、分解を推奨、示唆するものではありません
※『特別な許可を得た』という説明はフィクションです

用意したのは、ご存知ヤマハPASのリチウムイオンバッテリー
一世代前の「MADE IN JAPAN」モデルだ。
本来であれば、韓国製と噂される現行バッテリーで行うべき場面ではあるが、零細の当店で新品を実験台にするのは少々手痛い出費となるので、何卒ご理解を。

ネジは4ヶ所で、それぞれイジリ止め付きのトルクスが使用されている。
もちろんその意味は、開けてはいけないということである。

ケースを開けた状態。
ここまでは非常に簡単な作業で、特別なテクニックは必要ない。

バッテリーの中身はビニールでしっかり防水処理がされており、簡単には手出しできない。
もし防水パックを破った場合は、その時点で再使用はご法度だ。
水分が混入すれば、最悪炎上する可能性も十分にありえる。

まずはコントローラー部分から
バッテリーの制御基板とご対面。
左端にあるのが、残量インジケータ、右端にある黒い四角形のチップが制御用マイコンだ。
さらに両端にある黄色いコードはバッテリーセルの温度を監視するための超薄型サーミスタで、それぞれが直接セルの表面に接している。
ここまでで分かるように、バッテリーの中身は大きな二次乾電池ではなく、マイコン制御の精密機器なのだ。
樹脂ポッティングで覆われた基板を見てもまったく怯むことのないツワモノなら、他の電装部品の持つ意味合いも理解できるだろうが、自分を含めた多くの人間がここでお手上げ状態になる。

モーター側のオス端子との接続部分。
電池だからといって、プラスとマイナスだけではない。
真ん中の黄色、青、白の線はデータ通信用のものだ。

続いてバッテリーセルのコーナー
外観のケースサイズよりも、一回り小さいバッテリーセルの集合体。
もっとコンパクト化できそうな気もするが、これにはちゃんと理由がある。
リチウムイオンバッテリーは衝撃に弱いという特性があり、安全マージンとしてケースにバンパー的役割を持たせてあるためだ。

リチウムバッテリーは衝撃によって、セルの破裂や発火も起こり得るので注意してもらいたい。

ちなみに、初期のPAS販売店であれば知っていることだが、当時は交換用バッテリーを注文すると、メーカーから送られてくるのは、ヒートシュリンクされた組セルパックだけだった。
ニッカド時代までは、お店側でバッテリーケースを分解して中身を入れ替えるという作業をみんなやっていたのだ。

リチウム全盛の今となっては考えられないことだが、ニッケル水素時代に至るまで、バッテリーはそれほど危険視されていなかった。

使用されているバッテリーセルの規格は「18650」であった。
これは直径18mm x 長さ65.0mmの円筒形であることを示す、サイズ表記のようなものだ。

今回は便宜上スケールの数字を65.0mmと表示させているが、実際には少し短い約64mmであった。

他にも保護回路が先端に組み込まれているため、ちょっとだけ長いものがあったりと、仕様によって実際の寸法は変化する。

18650セルバッテリーは規格として大きく普及しており、あの電気自動車のテスラのバッテリー部にパナソニックの同セルが採用されているのは有名な話だ。

バッテリーセルの電極を上下から挟み込むニッケルタブの位置を絶妙に配置することで、小さなスペースで電圧と容量を調節している。

生セルの形状、色、容量、印字の書体から推測するに、おそらく旧サンヨー製の「UR18650W1」か「UR18650W2」あたりが中身の正体であると推測される。

18650セル1本あたりの出力電圧は3.6~3.7Vであり、このバッテリーの定格電圧は25.9V
ちょうど直列に7本繋ぐと、「3.7V x 7本 = 25.9V」となる計算だ。

さらにバッテリー全体の容量が4.3Ah(4300mAh)ということで、使用しているセルは1450mAhの7本を直列で3本並べた、計21本というところだろう。

このような組み方を専門的な言い方で、「○直○パラ」と呼ぶことが多い。
直は直列、パラはパラレル(並列)という意味である。

また直列(Series)と並列(Parallel)の頭文字をとった「○S○P」という表記も存在する。

つまり今回の実験台となったヤマハ「X72-21(90793-25093)」は

7個の直列、それを3列=「7直3パラ」

ということになる。

図解による説明は以下のとおり。
ついでなので比較として12.8Ahバッテリーの内部予想も作成してみた。

容量が3倍になっても、本体ケース体積が比例して大きくならないカラクリは、目的に応じてで内部セルの容量を使い分けているからだろう。

※年式によって電池の容量を示す基準が変化しているため、この数値は絶対ではありません
※この組電池予測はただのカンに基づくものであり、事実である確証はありません


そしてタブ(導通板)とセルを繋ぎ合わせているのは、もちろんハンダではない。
溶接可能な手段はスポット溶接かレーザー溶接(照射時間1/100秒以下)くらいしか存在しないので、シロウトには作業不可能な領域だ。

電池セルにハンダゴテ当てるなんて、時限爆弾を作るような行為だね

ネット上でこのような言葉を発見した。
なんとなく、アメリカンホームドラマの日本語吹き替えのようで面白い。
英語ジョークを無理やり翻訳したような違和感はあるが、熱に対して極めて弱いリチウムバッテリーをじっくり加熱するなんて、とんでもない話ということだ。

バッテリーを分解してはいけない本当の理由

それはズバリ、分解におけるメリットがまったく無いということに尽きる。
軽い気持ちでケースを開けてみても、昭和の電気製品のような甘い隙など見せてはくれない。
せいぜいやることと言ったら、切れたヒューズを交換することくらいだろうが、ここ最近ではまず切れたものを見た記憶が無い。

それどころか、発火や破裂の危険性が付きまとう上に、手放そうにもバッテリーのリサイクル業者から廃棄を拒否されかねない。
まさにデメリットのオンパレードが待ち構えているのだ。

探究心が満たされても、その後の苦労を考えれば、最初からこの写真を見て諦めるのが得策だろう。

今回の発端である例のお客さんは、定年間近の男性であった。
勝手な偏見だとは思うが、なぜかこの世代はとにかく分解行為を好む傾向にある気がする。
そして、自己満足以外にコレといった成果を得られずに終わるパターンを多数見てきた。

どうか、リチウムイオンバッテリーには手を出さないで頂きたいと願う。

リチウムバッテリーの危険性を示す動画も合わせて乗せておく。

うっかり自宅を全焼させてしまっては、高い買い物どころの騒ぎではないだろう。

バッテリー内部のセル交換は専門業者に出せば安上がり?

自分で作業するのが不可能に近いのであれば、セルだけの交換を専門に請け負う業者に依頼してみようと思うのは自然な流れだ。

ただ、メーカー純正バッテリーが高額であるところにはちゃんと理由がある。

18650規格のバッテリーセルの市場流通価格は、その性能にもよるが、メーカー品で1本あたり600円~1500円ほど。

Panasonic NCR18650GA リチウムイオンバッテリー(3500mAh) 2本組
Panasonic
販売価格 ¥2,880
(2016年3月11日16時49分時点の価格)

近年の大型バッテリーの7直6パラで42本、1本の単価を1000円としてもトータルで42000円もする。

しかもこれはセル自体の価格のみであって、その他にマイコンやらセンサーやらと必要部品はさらに多い。

大手メーカーともなれば、しっかりした品質のものを、工場原価に近い価格で仕入れることもできるだろうが、小規模で請け負う業者がどのようなセルを組み込むかまでは分からない。

少なくとも、利益がぶっ飛ぶような無茶はしないだろうし、もともと新品よりも低価格がウリなのだから、そこは推して知るべしというところだ。

フィクションサイクルでは、リチウムでセル交換された自転車の場合、それが判明した時点で全てのサービスをお断りしている。
全てのセル交換バッテリーが完全に悪い、とまでは言わないが、中に何が入っているか分からないものを店にもちこまれるリスクは、万が一であっても避けたいためだ。


YAMAHA(ヤマハ) 長生きバッテリー 4.3AH リチウムSバッテリー ブラック 97093-25101
YAMAHA(ヤマハ)
販売価格 ¥29,753
(2016年3月11日17時1分時点の価格)

※フィクションサイクルに実際の店舗は存在しないため、万一の場合でも被災することはありません
※断定的に解説をしていますが、これといって専門的な知識は持ち合わせておらず、すべて想像で成り立っていますのでご注意ください。

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