2015年8月31日

電動アシスト自転車のユニットを簡単にカスタムする方法

電動アシスト自転車のスポーツタイプは一般車・・・いわゆるママチャリ型とケースを共用しており、お世辞にもスポーティとは言い難い。

しかし普通のロードレーサーなどと違って、全てが専用パーツで構成されている電動アシスト自転車のユニットはどう手を付けていいのか、やり手のショップでもこればっかりは悩ましい問題である。

よくある手段として、チェーンケースカバーを外して、クランクをMTB用4アームに交換、バッシュガードを取り付けるというものだが、MTB用クランクはQファクターが広く、倒しこむだけですぐペダルを擦るようになるため、万人にオススメできるチューンナップではない。

※電動アシスト自転車におけるQファクター問題は後日


そこで今回紹介したいのが、数百円で“それっぽい”雰囲気が作れるこちらのパーツだ。



キタコ ボルトカバー(対辺12mm用)

自転車のカラーパーツは交換が前提だが、バイク用アクセサリーパーツは上から被せるだけというお手軽なものが多い。

お金に余裕がある人なら、特注のチタンボルトに焼き色を付けてもいいかもしれないが、さすがにそれはもったいないと思うならこの手がベストだ。

今回の実験車両はパナソニックのハリヤ。
まずはチェーンケースを外す。
純正そのままの状態。
これではギア部分が露出していない。
やはりスポーツ車はメカメカしいほうが良い。
さすがにカンパの5アームクランクのような芸術域の造形美を期待するには無理があるが、チェーリングは自転車の「顔」
これが見えるだけでかなり雰囲気が変わる。

ちなみに最新のハリヤはこのようにピカピカのガイドプレートが付いている。
トラブル回避のために付けておいたほうがいいが、自己責任で外してしまうのもカッコイイかもしれない。
さらに、失礼な表現ではあるが、この“何の品性も感じないコストダウンのカタマリのよう”なガイドプレート(バッテリー下部とプーリーアームからの延長)も外すことはとりあえず可能なのだが、その分チェーントラブルが増えるこということは忘れてはならない。

このように隙間からボルトキャップを嵌め込んでいく。

よっぽど覗き込まなければ樹脂のメッキカバーだとは気づかれないだろう。
あまりカラーパーツを強調すると安っぽさが際立ってしまうため、このようなチョイ見せレベルに留めたほうがオシャレだと思う。

ノンドライブ側(車体左側面)は電気系の配線類が多いため、カバーを外すのはあまり得策ではない。
どうしてもボルトが見せたい場合は外装ケースに穴を開けてしまうという手もある。
実はこの穴は本来ドレスアップのためのものではなく、トルク管理のためボルトへのアクセス向上を目指したものだった。
これはカーボンシートによるステッカーチューンとの合わせ技ではあるが、余計なパーツを付けて重量を増加させることもなければ、機械構造に影響する部分でもないので故障へのリスクもないため、遊び心の一環として手を出しやすいカスタムだ。
あわせてユニットのシルバーの露出部分もブラックアウトすれば、かなり締まった雰囲気になる。


このボルトカバーはパナソニック、ヤマハ、ブリジストンのセンタータイプユニットで使用できることを確認しているが、年式やモデルによってボルトサイズや雄ネジの飛び出し量が異なることがあるため、実車を確認してから作業を行ってもらいたい。
こちらはPASブレイスだが、基本的にユニットのボルトレイアウトは非常に良く似ている。
個人的に気になるのはボルトではなく、チェーンリング・・・
ここからは話題が大きく脱線してくるので、興味のない方は飛ばして頂きたい。

パナソニックのチェーンリングは一般的な軽快車に使われている「クロムメッキ」なのだが、ヤマハはオートバイのスチールスプロケット同様に少しザラつきのある黄色味掛かった「クロメート」のような処理となっている。
人によってはまったく気にならないとは思うが、自転車業界に長く居る自分としては違和感がありすぎて我慢が出来ない。

先ほども書いたが、チェーンリングは自転車の顔である。

その顔が化粧っ気のまったくない、外出する気もないような状態で人々の前をどうどうと手を振って自信たっぷりに歩いているようなものだとさえ思ってしまう。

ヤマハは基本がオートバイメーカーであるために、この部分へのこだわりは少ないだろうし、なによりネットや現実含めてこの事に不満を言っているのはフィクションサイクルくらいなものである。
さらに言えば「クランクは自転車の顔」という自転車界の通説を良く知っている人たちは、電動アシスト自転車というものに、さほど興味がないのだろう。

「世間の興味の無いことに、企業は力を注がない」
これはまさにその通りなのだが、実はそれを覆すちょっと意外なかつて自転車があった。
これは2002年頃、つまり13年も前のパナソニックのエクセレントビビなのだが、注目すべき点はチェーンケース中心部にある。

粗い画像しか見つからなかったが、良く見ればチェーンリングを隠すようにわざわざ内部に黒いカバーが装着されている。
最高グレードのエクセレントビビだけに与えられたこの飾りカバーの意味は、パナソニックという自転車メーカーが、明らかにこの部分を見られることを意識し、さらに見栄えを良くすることによって高いグレードであることを示すことができると知っていたということだ。

まあパナソニックはなんでもカバーで覆いたがるということもあるのだが、この細部までこだわり抜かれた当時の最高級電動アシスト車は「エクセレントVIVI(BE-EHE63)」と呼ばれ、今日までの全車種を含めてもパナソニックの最高傑作の地位は揺るがないだろう。



こんなことを書いていてふと思い出したのだが、かつてのチームメイトで年齢別とはいえ全日本を制したこともあるM君の話だ。
彼は一時自転車競技を引退した身であったが、ある日ふとお店にロードレーサーを持ってやって来た。
それはかつてMが乗っていた華々しいDURA組みのCARRERAではなく、謎の安物や古いパーツで構成された寄せ集めバイクだったが、一点だけ、クランクにDURA-ACEが使われていた。
しばらくぶりにロードでサイクリング始めようと思って組んでみたから調整して欲しい」という内容だったので、それだったらDURAのクランクなんてもったいないよ、と伝えたところ、彼からこんな言葉が返って来た。
やっぱりクランクはDURAじゃないとダメかなって、だって他の安いのはタワむし、それにせめてクランクくらいはDURAじゃなくちゃさ

M君はコンポネートのグレードに対してそれほどこだわる性格ではなく、与えられた機材にも文句を言わない人だったが、なぜかクランクだけ特別に注文を付けてきたのが未だに印象に残っている。

つまり自転車にとって・・・、いや正しくは自転車乗りにとって、やはりクランクの持つ意味合いは大きいということだ。

その後M君はあれよあれよという間に現役復帰し、ある有名実業団の主力メンバーまで気づけばなっていた、という具合だ。

さてこのパナソニックの電動アシスト自転車と、ロード実業団のM君。
まったく関係ないようで、実は意外なところで彼のその後の人生を左右したという話はここでは書けないので、気になる人は店長まで。


クランクにまつわる話は「自転車生活 VOL.10」に面白い内容が乗っていたので気になった人は一読してもらいたい。


※フィクションサイクルでは、電動アシスト自転車の駆動部分に関するカスタムは一切受け付けておりません。
※カバー部の分解であっても、トラブルの原因となることがあるため、プロショップでの作業をお勧めします。

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