2014年9月14日

「スポーク長計算機」まとめ どのサイトが優れているのか?


今や完組みホイール全盛期で手組みホイールのシェアは「風前の灯」と言っていい。
フィクションサイクルが手組みホイールの終焉を予感したのは遡ること10年以上、あの名作ホイール「MAVIC KSYRIUM」を手にした瞬間だった。
完組みならではの自由な設計と、理想的なスポークレイアウト、そして高剛性リムを少ないスポークでハイテンションで張るという現在まで続く発想は、それまでの常識を簡単に打ち破るものだった。

はっきり言ってしまうと、性能において手組みホイールが完組みホイールに追いつく日は二度と来ないだろう。
乗り心地や、脚力に合わせたオーダーメイドなどの優位性といった考え方もあるだろうが、それは単に完組みホイールが高剛性、軽量を求める方向にあって融通が利きにくいためであって、それぞれの用途に合わせて最初からホイール全体を設計すれば、どんな乗り心地でも再現は可能だ。

まあしかしその発想は現実的では無いし、サポートカーが常に伴走している訳でもない我々一般ユーザーにとっては、緊急時のリペアなど、まだまだ完組みと手組みを両天秤にかける余地は残されている。
流石に数十万もする完組みホイールに真っ向勝負すれば厳しい面もあるが、手組みホイールだって廉価帯の完組みホイールくらいなら、チョイスと組み方次第ではそれを上回る能力だって発揮できるからだ。

ではその究極の手組みホイールを手にするためにはどうすればいいのか?



「プロに依頼する」
これ以上の答えはない。

少し話は逸れるが、手組みホイールの組立ては非常に置くが深い。
リム、ハブ、スポークを組み付けるだけなら比較的簡単で、自転車技士(以前の自転車組立整備士)、もしくは自転車安全整備士の資格保有者ならば、それが合格の最低条件となってもいる。

しかしそれだけでは不十分だ。
こんなことを言っては大変失礼かもしれないが、技士や整備士の資格というのは、自動車で言えば「運転免許証」に過ぎない。
免許を持っているからといって運転が上手いわけではないのと同様、ホイールの組立ても資格取得後にどれだけの本数をこなし、実戦からのフィードバックを得たかによって、そのスキルは大きく異なってくることだろう。

そんな歴戦のプロメカニック達にも実は悩みどころはある。
それが「スポークの長さ決め」という作業だ。
ベテランであれば、ある程度の定番の組み合わせは頭の中にインプットされているだろうが、次から次へと登場する新製品の寸法をすべて暗記している人はいないだろうし、もし記憶しているとしてもそれはさほど重要なことではないかもしれない。

「三平方の定理(ピタゴラスの定理):a2=b2+c2-2bc*cosθ」

この数式が、スポークの長さを決定する際には必要となる。
とは言っても、これを元に毎回電卓を叩くほど自転車屋は暇ではないし、この式がすんなり計算できるようならそもそも万年不景気の輪界に身を置くこともなかったかもしれない・・・、という冗談はさておき、この複雑な数式を簡略化してくれるのが、スポーク長計算サイトの存在だ。

先ほど言った歴戦のプロ達の多くも、今やWEB上でスポーク長を計算していることだろう。


では具体的にどのようなサイトがあるかといえば、検索サイトで「スポーク長さ 計算」とでも入力すると複数のサイトがピックアップされるのでまとめてみた。

■計算サイト■

自転車探検!
自転車のスポーク長 計算器
http://www.geocities.jp/jitensha_tanken/spoke.length.html
まず有名なのがここ。
ただ計算してくれるだけではなく、ホイールの基礎知識などの情報が豊富で参考になるところが多い。
ここの部分だけではなく、全体も読んでおくと非常に勉強になる。
他のサイトでは少ない、リム穴オフセットの値が入力できる。
ただしフランジからロックナット間の寸法が必要など、入力項目が少し分かりづらい面もあり。
おススメ度:★★


サイクルボックス
スポーク長計算

http://setagayacyclebox.web.fc2.com/tips/wheel/wheel.html
世田谷にあるサイクルボックスさんという自転車屋さんが作った計算機。
非常にシンプルで入力項目は5つのみと分かりやすい。
左右を一括で計算できないのがやや面倒ではある。
おススメ度:★★☆☆



KujiBlog ☆彡くじぶろぐ
スポーク長計算CGI参号機 - 組まないか -

http://spoke.gzmapss.com/
あの有名な山川純一氏の漫画のパロディ風計算機。
一見するとおふざけサイトのようで、実は非常に使い勝手が良い。
リムオフセットが設定できない点を除けば、ほぼ完璧と言ってもよいほど素晴らしい。
おススメ度:★



CYCLE FACTORY
スポーク長に困ったら…

http://www.cy-factory.com/work/spork.htm
札幌のプロショップ、CYCLE FACTORYさんの計算機。
有名どころのハブとリムの寸法情報あり。
内容的にはサイクルボックスさんとまったく同じとなっている。
おススメ度:★★☆☆


ノームサイクル
スポークの長さを計算しよう

http://nohm-cycle.xsrv.jp/post-4.html
千葉のノームサイクルさんの作った計算機。
「SpoCalc」という有名なエクセル表のデータを元に作成されており、精度は良好。
イラストがないので初心者には分かりづらいかもしれないが、必要最低限にしてすべての値の入力が可能となっており、慣れればもっとも使いやすいサイトのひとつ。
おススメ度:★★


DT SWISS
Spoke calculator 2.0

http://spokes-calculator.dtswiss.com/Welcome.aspx?language=en
もはや説明不要の有名サイト
スポーク界の大御所、DTスイスの純正計算機。
自社製品だけでなく、多くのメーカーの寸法情報がリストから選択できて便利。(情報の精度に難あり)
英語表記のため見慣れない単語が登場するが、慣れればこれほど使い勝手の良い計算機はなく、おそらくプロショップの愛用者も多いことだろう。
動作がやや重いのが難点。
おススメ度:★★


SAPIM
Spoke calculator

http://www.sapim.be/spoke-calculator
DTと並ぶスポークメーカー、サピムの計算機。
誰でも分かりやすいUIが特徴。
入力値も実測しやすい寸法を打ち込むようになっており、現物を測りながら入力することを想定している。
しかし、ERDやフランジセンター距離といった概念がないため、すでに寸法が分かっている時には反対に手間がかかってしまう。
すべて実測値で計算したい場合はここを使うのがいいだろう。
おススメ度:★






■計算ソフト■


Harris Cyclery
Spocalc

http://sheldonbrown.com/rinard/spocalc.htm
「ハリス自転車店」というマサチューセッツ州にある自転車屋さんが作ったエクセルシート。
いろいろなところで計算サイトの基礎となっている。
エクセルなのでデータ管理がしやすい。
また一回の計算で複数の組み方の寸法が算出されるなど、様々な組み合わせを考える時にとても便利。
おススメ度:★★


infofreako
spokecalc.

http://cycle.infofreako.com/spokecalc.html(サイト閉鎖)
HTMLタイプの計算機。
おそらく現存するスポーク計算機の中では他を圧倒する高性能さを誇る。
左右でスポーク数、交差数を変更できるなど、マニアックな仕様のホイールを組むには必須のソフトとなっている。
また、リアルタイムでイメージが抽出されるため、バルブ穴とハブのロゴを合わせるといった作業の時にシミュレーションができるなど、これを作った人間もタダ者ではなさそうな雰囲気が漂ってくる。
フィクションサイクル的にはこれさえあれば他は必要ない。
おススメ度:★

残念ながらサイト閉鎖にともない公式からはDL不可となってしまっている。
参考までに、ネット上にアップしてくれている人のリンクを記載しておく。
http://kehaar.blog83.fc2.com/blog-entry-255.html
http://tablet2ch.com/2c/n/bicycle/1346768183/p7


NaoSoft
SpokeSimulator

http://naosoft.net/spks.html
こちらは他の計算機と違い、フリーだが本格的なソフトウエア。
対応OSはWindows 8/7/Vista/XPとなっており幅広く使えそうだ。
名前の通り、シミュレーターとしての再現能力は高く、「spokecalc」同様に複雑な仕様の計算にも絶えうるものとなっており、さらに細かいリム穴とフランジ穴の位置関係などの情報も見ることができる。
非常に高性能だが、逆にそれが仇となり普段使いには煩わしさを感じることもある。
おススメ度:★★


各スポーク長計算サイトの結果精度比較

次に肝心の計算機の精度だが、サピムを除けばほぼ横並びであり、どのサイトを利用しても問題はなさそうだ。

計算条件は以下の通り
(スポーク穴径が入力可能なサイトでは2.5mmで統一)

フロントホイール
・ホイール:MAVIC OPEN PRO (ERD:602mm)
・ハブ:SHIMANO HB-6800 32H
・組み方:ラジアル

リアホイール
・ホイール:MAVIC OPEN PRO (ERD:602mm)
・ハブ:SHIMANO FH-6800 32H
・組み方:3クロス(6本組)

各部の寸法詳細は次の設計書の数値を使用しているが、実測ではないため参考程度に考えて頂きたい。
この計算書フォーマットはPDFで用意してあるので、必要な方はDLして使ってください。

pdflogo ホイール設計フォーマット
pdflogo ホイール設計フォーマット(販売店向け)


すべてのサイトにて同じ数値を入力していったところ、ほぼ0.1ミリ以内での誤差となった。
これは小数点の処理の問題もあるだろうが、どの計算機も非常に精度が高いということが分かった。
ただひとつ、あのスポーク界の人気ブランド「SAPIM」だけが最大で1.5ミリほど平均値より長い計算結果となってしまった。
この原因としては、サピムはERDの入力が直接できず、「リム内径(D)+リム厚(F)」という項目になるが、今回は「リム内径+(リム厚×2)=ERD」という決まった値で計算したため、本来のERD(ニップル接触面+1mm程度)になるよう、計算機により自動的に加算されたのかもしれない。
もし不確定要素が心配であれば、サピムは使用しないのが無難だろう。

このように様々なサイトや計算機があるが、とりあえず計算結果に違いが少ないことから、あとは自分の使いやすいものを利用してくのが良さそうだ。




1 件のコメント:

  1. 初代XTRのラピットファイヤーの変速機を手に入れたので、8速Dura7403のシャフトを146mmに換えカンパのK2というリムでMTBのホイルを組もうとスポーク長の計算をググっていたところです。こうゆう硬派なサイトに出会うとホッとします。
    自転車は乗ってもいいけど、自分であれこれいじる楽しみも捨てがたいもんです。
    グリスアップ直後のハブの軽さはうれしくなりますね。カップアンドコーンのたまものです。
    シールドベアリング、完組は味気ないですね。完組で旅先でスポークが飛んで困ったものです。

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