2014年9月24日

電動アシスト自転車はレースマシンに勝てるのか?【前半】

レースの世界に電動アシスト自転車を持ち込むのはまるっきしタブーか?
と言えば、そうでもない。
タブーと言うより、そんなこと話題にも出ないので、真剣に取り合うレベルにも達していないということだ。

レースのレギュレーションを見ても「電動アシスト自転車の使用は禁止とする」とまじめに書いてあることは非常に少ない。
もしあったとしても、うっかりさんが際どく電動が出場できそうな、ママチャリ耐久やファミリー向けエンデューロであって、本格レースでは「UCIレギュレーションを適用する」といったような、かなり細かな規則から明記されていることが多い。

おそらく、「市民マラソンに自動車で出てはいけません」というルールくらい、電動アシスト自転車での参加はナンセンスだと思われているのかもしれないし、もしかしたら「電動アシスト自転車=ママチャリ」ということで相手にされていないだけかもしれない。

それでは実際に電動アシスト自転車でレース機材と勝負をした場合、どっちが勝つのか?
「日本一の電動使い」を自負しているフィクションサイクル店長が1年間、文字通り身体を張って試してみた。

その前に、もし電動アシスト自転車でレース機材に勝負を挑むことを人々はどのように感じるのかリサーチしてみた。



一般人・・・
  電気の力を使うのでズルイ。楽している。勝てて当たり前。
自転車初級者・・・
  たしかに出足は早いけど、そもそもママチャリがロードに勝てるはずがない。
自転車中級者・・・
  こういう異物的ものを持ち込んで欲しくはない。興味がない。
自転車上級者・・・
  これは面白い。それぞれの異なる特性がどこで釣り合うのか真剣に見てみたい。
自転車界側になった人たち・・・
  日本の市場活性のためにも、E-BIKEは積極的に取り込むべき。

ということで100人ほどに聞いてみた結果だ。
これがすべてというわけではないが、平均したらこのようなイメージだったと思う。
全然関係のない切り口ではあるが、不思議なことに電動に否定的だったのは自転車の中級者であった。
いちおう区分けとしては、実業団以下~レース参戦者あたりを中級としてみたが、この層は実に自転車に対してとても熱意を持っており、自転車屋が「お客さん」として接するにはもっとも有難い人々なのだろうと感じた。

では最初に使用した電動アシスト自転車だが、2014年現在市販されている中でもっともポテンシャルが高いと言える、パナソニックのジェッターを採用した。
別にどのメーカーでも良かったのだが、正直まともに走れる電動がジェッターしか存在しないのが本音だ。
ちなみにネットでの評判が高いPASブレイスはフィクションサイクル的には論外の部類に入ってしまう。
基本は市販スペックのそのままだが、ホイールの選択幅を広げるため前後ディスク化している。
市販車をあれこれ改造するのは趣味ではないので、必要最低限のパーツ交換に留めたつもりではいるが、結局残ったのはフレームとバッテリーとモーターだけであった。
そもそもがお値段17万円強と、見る人によっては安物自転車のため、ストレスを感じる部分が多かったのも事実なので、こうなるのは必然だったのだろう。
もし仮にこの仕様で販売するとしたら、おそらく40万円弱くらいだろうか。
今回はプロトタイプということもあり、セッティング変更を頻繁に繰り返したため費用的にはもっと高額な計算となっている。

先ほどジェッターしか選択肢がなかったと言ったが、フィクションサイクルが最初に求めた条件は
・700×23Cのタイヤが履けること(対ロード)
・26×2.2以上のタイヤが履けること(対MTB)
である。
ちなみにロードレーサー寄りではなく、MTBに強く振って製作した理由は、ロードにはまったく勝ち目がないからだ。


ではさっそく各種目別に結果を検証して行きたい。
また対決は乗り手のレベルに合わせた結果も想定して3パターン書いておく。
※初級者=乗り始め~レース未参加
※中級者=ホビーレーサー
※上級者=実業団クラス以上


電動アシスト自転車 VS ロードレーサー
これについてはすでに答えを言ってしまったが、やはり秒殺の刑に処せられた。
相手は十数秒たらずで50km/hに達するロードレーサー。
一方はアシスト範囲25km/hまでの健全なる電動。
重量差も3倍近く開いており、平地、登り、下りともに全敗。
50kmのロードレースを想定しても、一回も前に出るチャンスはない。

初級者同士だったら=ドロー(ただし山岳レースだったら)
中級者同士だったら=ロードの勝ち
上級者同士だったら=ロードの圧勝

今回はほとんどやる気がなかったが、もしデュラDi2にカーボンパーツを多用して挑んだとしても結果は変わらないだろう。

勝つためには・・・
車重を6kg台まで落とす or アシスト速度域を35km/hまで引き上げる


電動アシスト自転車 VS トラックレーサー(ピスト)

ロードレーサーよりさらに分が悪い相手だった。
周回速度が高く、モーターの出番などまったくない状態。
比較的長距離なポイントレースやマディソンでもアシスト域にかすりもしないどころか、ハロンでもボロボロのタイムを叩き出すに違いない。
さらに言えば競輪場はプロのもの。こんな目立つものを持ち込める機会もなかなか無い。

初級者同士だったら=ピストの圧勝
中級者同士だったら=ピストの圧勝
上級者同士だったら=ピストの圧勝

勝つためには・・・
車重を7kg台まで落とす or アシスト速度域を60km/hまで引き上げる


電動アシスト自転車 VS トライアストン(TTバイク)

もはややる気がしないので割愛。
写真は4km個人追い抜き(コヌキ)用バイクだが、これに勝てる気がしない。
TTは基本平地だが、長距離のため初級者はバテるかと思いきや、そもそも車速が違い過ぎる。

初級者同士だったら=TTバイクの勝ち
中級者同士だったら=TTバイクの圧勝
上級者同士だったら=TTバイクの圧勝

勝つためには・・・
車重を7kg台まで落としてエアロ効果高める or アシスト速度域を45km/hまで引き上げる

電動アシスト自転車 VS シクロクロス

これは想像以上に行ける勝負だったがレースのコンディション次第といったところだろう。
ドライコンディションで担ぎセクションがたくさんあったのならば惨敗だが、ウエットや砂など漕ぎが重く、さらにトラクションが掛からない場面で電動は強かった。
しかし近年のコースレイアウトの流れとして、比較的高速な区間と、意図された担ぎセクションが混在するようなレースでは肩にかかる負担ばかり気になり、その重量から押し上げも困難であった。

初級者同士だったら=ドロー(路面が荒れれば電動の勝ち)
中級者同士だったら=シクロバイクの勝ち
上級者同士だったら=シクロバイクの圧勝

勝つためには・・・
車重を8kg台まで落として担ぎやすくする & アシスト速度域を30km/hまで引き上げる

後半へ続く。


電動アシスト自転車はレースマシンに勝てるのか?【後半】
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2014/09/e-bike-vs-racing-bike-2.html


※上記にて、「勝つためにはアシスト速度を引き上げると」書いていますが、電動アシスト自転車の違法改造を推奨するものではございません。
フィクションサイクルではレギュレーション違反となる電動アシスト自転車の整備、修理等は一切受け付けておりません。

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