2014年9月13日

「RAWカラー」クロモリフレームの作り方 【後半】

前回の剥離作業から3日ほどで、やはり剥き出しの表面には軽い錆が出てきてしまった。
鉄という素材は実に錆びやすいとあらためて考えさせられる。

前回までの内容
「RAWカラー」クロモリフレームの作り方 【前半】
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2014/09/raw.html


中には錆びも「味」ということで、これを受け入れてしまうという考えの人もいないわけではない。
しかし、自転車は乗り物。
錆が進行し、腐食がひどくなれば安全面を脅かすことになる。
やはり徹底した防錆対策は必須だろう。



こちらの写真はストリートMTBで有名なTUBAGRA(ツバグラ)さんから引用させてもらった。

http://tubagra.com/21312/

文章から推測するに、スチールのクリアー塗装フィニッシュとのこと。
この写真からも、単純にクリアーを吹いただけでは、下から発生する錆は防ぎきれていないようだ。
しかし、この錆も含めた全体の雰囲気は実に格好いい。


一言で防錆対策といっても、どのようにしたらいいのか?
鉄が錆びる要因として、酸素と水分がある。
この両者を完全に遮断できれば、錆は発生しないのだ。

ほとんどのスチール製品が、塗装、メッキがされており、中には南部鉄器のように漆を焼き付ける処理や、黒錆処理などは奈良時代に確立された防錆方法であり、様々な方法が考案されている。
この手法のほぼすべてが、素材表面を覆い隠してしまうものであり、今回の趣旨である「RAWカラーの作成」においては、取れる方法はクリアー塗装のみとなる。

塗装するにあたり、一番重要となるのは下地処理だ。
ビルを建てるにしても基礎工事が大切なのと同様、塗装もその土台作りから始める。

■ベース処理■

いきなりだが、まずはフレームに合わせた棺おけのような枠を作成。

これは最初にフレームの細部やパイプ内部の錆を落とすのだが、溶液の節約のため枠にビニールシートを張り、このような水槽を作る。

世の中には高性能な錆取り剤がいろいろと存在するが、自転車のフレームを丸ごと漬けるには最低でも30リットル強が必要となるため、今回は安価なサンポールを使用して錆取りを行った。

サンポールに含まれる塩酸と反応してフレームから細かい泡が発生する。
このまま2~3時間置く。
濃度は5倍希釈、塩酸濃度は2~3%程度だろう。

余談だがサンポールの塩素濃度は9.5%、毒物及び劇物指定令によれば10%を超えれば劇物ということなので、サンポールは意外にも際どい商品である。
それももうひとつの懸念として、この「酸洗い」による影響だが、クロモリは「遅れ破壊」が発生しやすい高強度鋼ほど引張り強さは高くなく、常時張力がかかっているわけでもないため、問題はないだろう。
「遅れ破壊」についてはこの本の中でよく書かれている。


http://books.google.co.jp/books?id=Ugpqtjg8WLsC&pg=PA26&lpg=PA26&dq=%E9%81%85%E3%82%8C%E7%A0%B4%E5%A3%8A+%E9%85%B8&source=bl&ots=FZgy6i7Gpb&sig=3TEZ6gl4IDA-1AKNOFmGzcGpJ4M&hl=ja&sa=X&ei=2dETVI7gHJHiuQSF8YG4AQ&ved=0CBwQ6AEwADgK#v=onepage&q=%E9%81%85%E3%82%8C%E7%A0%B4%E5%A3%8A%20%E9%85%B8&f=false


フレームパイプ内部より溶けて浮き出た錆。
外見は綺麗に見えるが、パイプ内部では思ったより錆が進行しているようだ。

フレームはこれで綺麗になったが、このままでは全体が酸性のため、あっという間に錆が発生してしまうため、アルカリ化の処理を行う。

こちらもどこでも手に入り、安価な重曹を使用。
サンポールから水揚げしたフレームを素早く中性洗剤で水洗いし、そのまま重曹プールの中へ。

もしサンポールに不安があれば、バイクのガソリンタンク用の錆落としもかなり効果があるので使ってもいい。



 フレームを乾燥させ、とりあえずの防錆スプレーを吹いたら、次は研磨に入る。

塗装と違い、見えている部分がそのまま仕上がるので気になる部分はこの段階で徹底的に処理する。

無機質で自然な感じのヘアラインを再現。


■塗装工程■

使用するのは、脱脂用シンナー、防錆プライマー、ウレタンクリアだ。

ラッカーうすめ液とペイントうすめ液であれば、ラッカーうすめ液のほうが揮発性が高く、作業も早く行えるが、その分溶解力も強いので取り扱いには注意が必要だ。
また塗装したものを脱脂するなら、うすめ液は強すぎて使えないため、シリコンオフを用意しよう。



再度中性洗剤で水洗いし、ラッカーシンナーで徹底的に脱脂する。
この作業がもっとも重要だと言える。

クリアはスチールにそのまま塗装できないため、繋ぎとしてプライマーが必要となる。
従来は防錆プライマーは有色であり、たとえば工事中の手すりに塗ってある朱色の塗料のようなものがほとんどであった。
そこで今回使用したのが、2013年に発売されたばかりの新製品「錆を予防919」だ。

この缶のデザインが悪いのか、防錆プライマーに見えないのが弱点なのか、扱っている販売店は少ない。
しかし内容としては、
・染めQテクノロジィが販売
・ミッチャクロンマルチ同様の密着性
・防錆効果
・無色透明
・極薄塗膜
・上塗り可能

まさに画期的なプライマーである。
成分はトルエン、キシレン、エチルベンゼンとある。
主な用途は、プライマーというより、防錆油の代品としての長期の防錆が主体のようだ。



「錆を予防919」4回目の吹き付けが終わり乾燥させたところ。
外観、手触りも含め、素地となんら違いはない。
非常に薄い皮膜らしく、塗ったか塗ってないかの境が分からなくなるレベルだ。

一日乾燥させたあとは、ウレタンクリアで最終仕上げとなる。
クリアーは通常のカラー塗装工程がないため、通常よりも余計に重ねたほうがいいだろう。
やはりクリアーを吹くと多少のツヤ感は出てしまうが、それでも未塗装クロモリの雰囲気は十分に残している。





これですべての工程は完了した。
はたしてこの先、錆が発生するのかは経過を見なければなんとも言えないし、皮膜の薄さから来る不安もある。
しかしその不安要素をすべて差し引いても、クロモリ素地の魅力は人を惹きつけて止まない。


前回までの内容
「RAWカラー」クロモリフレームの作り方 【前半】
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2014/09/raw.html

3 件のコメント:

  1. RAWカラーに挑戦しようと検索していましたら、ここにたどり着きましてご参考にさせて頂いております。その後の様子が知りたいと思いコメントしています。フレームのサビなど発生しましたか?こうした方が良かったなどありましたら教えて下さい。

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    1. 当店のコンテンツに興味をお持ちいただきありがとうございます。
      こちらとしても、この企画の続報について検討している最中でした

      結論から申し上げれば、2年近くが経過した現在でも、まったくサビは発生しておりません
      おそらく「錆を予防919」の驚異的な防錆効果によるものでしょう

      今回の工程はいくつか省略しても問題ないかもしれません
      それほどまでに完璧な状態を維持しています

      削除
  2. ロウカラーの自転車がほしくて探したのですがありませんでした。
    自作するしかないのかと思いこちらの記事をみて参考になりました。
    近々やろうと思っているのですが、2年近くたっても全く錆が発生していないとのことで続報がとても気になっています。
    是非続報していただけるとありがたいです!

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