2016年3月2日

今、自転車界で「蛍光イエローファッション」が熱い


今26インチのMTBが熱い

いかがだろう、2026年頃のサイクルスポーツ誌の巻頭特集としては、なかなかキャッチーなフレーズだと思う。

冗談はさておき、どんな業界にでもリバイバルブーム(再流行)というものは必ずやってくるものだ。
そのサイクルはファッションで約20年と言われている。
例を出せば、1970年代に流行った「ベルボトム」は90年代中盤に再流行したり、1980年代中盤~1990年代初頭に爆発的に広まったツーブロックヘアは、2010年代に入り再燃したのは記憶に新しいところだろう。

ということであるのなら、現在でも1990年代中盤のブーム再来がどこかにあるハズだ。
それは自転車でも例外ではない。


レース会場での蛍光イエローファッションの普及率調査

先月、とあるレース会場で調査を行った。
実業団の選手たちは統一ユニフォームということもあり、赤や黒のものも目立ったが、それでも蛍光イエローのシューズ、シューズカバー、ソックスを着用する参加者は人目で多いことが分かった。
一部のクラスの抜粋だが、全89人中、該当者は18人もいた。
割合でいけば約20%、およそ1/5の選手が蛍光イエローのアイテムを足元に取り入れている結果だ。
もちろん、ある程度の上位クラスのため、該当者は自転車文化ピラミッドの中でも頂点のすぐ下に位置しているトレンドリーダーの方々であり、極一部の層の限定の突発的ブームでは無いと、こちらでは勝手に判断している。
ブランド別としては、やはりDefeetやSIDIの人気が目立ったが、ON-YONEやGIRO、あとは何だか良く分からないブランドなどの少数派もいた。

20年前に蛍光イエローブームはあったのか?

約20年前の1995年、95という数字を関した商品に「NIKE AIR MAX 95」がある。
エアマックス狩りなどという悪しきキーワードまで登場するなど、そのブームはスポーツギアの枠に留まらず、社会現象にまで発展した。

そのカラーに鮮烈な蛍光イエローが取り入れられたのは有名で、近年でも復刻版が90年代ファッションとして再燃の兆しを見せている。

当時の自転車市場においても、特にMTB界にて蛍光イエローカラーは、そのMTB自体のブームと相まって鮮烈な印象を世間に与えていた。
残念ながら、MTBより保守的な層の多い、ロードの世界ではそれほどの普及は見せなかったが、デサントのロードウエアや、ZIPPホイールのステッカーにはしっかりと蛍光イエローが取り入れられてたことを往年の自転車乗りであれば記憶の中に留められていることだろう。

手元に写真が残っていないため、ネット上から画像をお借りするが、今では考えにくいほど、様々な部位まで蛍光カラーに彩られていた。
出展元 http://www.mtb-news.de/forum/t/s-lenker-marin.518230/


出展元 http://old-mtb.blogspot.jp/2015/07/no0001-norton-passage.html

しかしブームという言葉のとおり、必ず終焉がやってくる。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理(ことわり)」と言ったように、その鮮烈過ぎた蛍光カラーは時代の波間へと消えていったのだ。

フィクションサイクルの店長は、たまにマニアックな自転車店に立ち寄ることがある。
それは、最新トレンドをいち早くキャッチするお店ではなく、歴代商品をアーカイブしたがる手合いの店主のいる店だ。
その理由は簡単で、そこには確実に次世代のトレンドのヒントが転がっているからである。

実名は伏せるが、東京下町の店名にパンチ力のある自転車屋さんの2階などは、まさに自転車界の小宇宙であった。

最新トレンドを追いかけるのに雑誌を読んでいては遅い。
未曾有な未来の片鱗は、偉大なる過去の中にこそ存在するからだ。

関連情報
SHIMANOの意欲的サングラス「CE-S22X」レビュー
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/08/shimano-ce-s22x.html

90年代とは違った蛍光カラーのチョイス

一度は波間に消えた蛍光カラーも、再び浮上するタイミングがやってきた。
それが2010年代中盤の今だ。

実は、あえて取り上げるには遅すぎるほど、蛍光カラーブームは周知の事実となってしまっている。
今回のテーマを「蛍光イエロー」に絞ったのは、蛍光カラーブームが、蛍光イエローブームに集約されてきているとの見通しが確信に変わったからだ。

おそらく蛍光カラーブームの兆しは2012年ごろからスタートしており、2013年にはド派手なカラーのコメンサルらがMTBレース会場にポツポツと目立ち始めていた。
当時、蛍光カラーを採用した自転車商品を扱う代理店の社長に、そのブームについて尋ねたときには

蛍光カラーは目立つ、だから会場に数台しかいなくても、数が多く見えてしまう。本格的な普及はまだちょっと先と思っている

という答えが返ってきたが、それこそ「先見の明」だったのだろう。

蛍光カラーはしばらく市場でバラついた動きをしていたが、今はイエローが強い。


この中でもイエローの他、ピンクオレンジグリーンは健闘している。
刺激の強すぎるピンクは別としても、各メーカーやチームのコーポレートカラーの後押しもあり、全体に広く行き渡った感じだ。


しかし、イエローは特定のブランドに囚われることなく、アパレルやサイクルパーツの差し色として大活躍している。

この「差し色」というのがキーワードであり、90年代には前面に押し出されていた蛍光カラーが、2010年代ではブラック系に対する明暗の引き立て役としての役割が大きくなっている。

この理由の一つとして、カーボン系製品の躍進があげられるだろう。
現在のトレンドはUDカーボン(Uni Directional)というほぼ無地のカーボン地を無塗装で、しかもマットで仕上げたフレームや関連パーツだ。

かつての3Kのように格子模様の折り目もなく、一見しただけではカーボン地とは見極められないものも多い。
その真っ黒なキャンパスに蛍光カラーは非常にマッチする上に、小さな塗り面積でインパクトを生み出し、素材感を損なわないという利点もある。

そしてもう一点が、配色のシンプルさだろう。
90年代MTBのフレームは蛍光トリコロールなども珍しくなく、とにかくビビットな自転車がトレンドだった。
出展元 http://www.retrobike.co.uk/forum/viewtopic.php?t=187006

しかし、この2010年代のブームでは、使用する蛍光カラーは単色で統一され、90年代と比較しても圧倒的に洗練されたイメージだ。

混沌としたカラーチョイスは流行を繰り返すと同時にブラシュアップされ、よりシンプルで統一感のあるデザインとなって再来したことには理由がある。

それは、ただ時代が繰り返したというだけでなく、カーボン素材の進化や、コンポネートのブラック化などによって、新たな受け皿が完成し、その結果としてブームがもたらされたと言って過言ではないだろう。

オシャレ上級者は自転車ウェアをカジュアルに着こなす



先ほどのレース会場での集計結果が示すとおり、蛍光イエローはトレンドに敏感なファッションリーダーたちに受け入れられている。
しかし、それは“現在”であり、少し時間が経てばまたそれも“過去”となるだろう。

今後の流行を占う人々がネット上でささやき合う「アスレジャー」というフレーズ。
これが未来に登場する新たなトレンドだと彼らは言う。

ざっくり要約すると、「スポーツウエアを普段着に」というものだ。
もちろん本格的ブームがやって来る確証などまったくないのだが、従来の自転車ウエアと言えば、バリバリのレーサージャージが主体であり、他の選択肢はほぼ邪道扱いであった。

ロードレーサー=ピチピチレーサージャージ

このスタイルを絶対的信条とするのは、もう最前線に立つレーサーだけでいいのではないだろうか?

自転車ではその実用性から、密着性が高く、機能美に優れたレーサージャージがスタイルとして高く評価されており、たとえ休日の“のんびりサイクリング”であっても、ツールドフランス出場チームと同じレプリカジャージを身にまとって出掛けるのは、なんら不思議なことではなかった。

多くの自転車乗りは自らのスタイルには概ね満足しているものだ。
しかし、それが赤の他人から見てファッショナブルに映るかどうかは別問題という点について言及するサイクリストは少ない。

自転車は自己満足なのだから、なんでもいいじゃないか?
たしかにその通りではある。
が、こんな例え話に置き換えたらどうだろうか

晴天の休日、自慢の愛車「フェラーリ458イタリア」に憧れのF1チームと同じレーシングスーツを着込んでガレージを出発する。
もちろん、他のファッションにも余念はない。
スパルコのレーシングシューズ、グローブにはアノ有名選手のサインももらってある。
6点式のシートベルトは程よい緊張感を演出してくれることだろう。
気持ちのいいワインディングを2時間ほど走って目的地の『道の駅』に到着する。
颯爽とヘルメットを脱げば、薄っすらと気持ちの良い汗をかいていたことに気づく。
そして名物のソフトクリームを堪能する。

『今日は天気が良かったのでフェラーリでグルメドライブです』
仕上げのfacebookへの投稿もバッチリ決まった。
フェラーリ仲間からどんどん「いいね!」のリアクションが・・・

さて、別にフェラーリ乗りがどうのこうのという話ではない。
要するに、自己満足であれば、何でもいいのか?ということだ。
もし自分が道の駅でそんなエキセントリックな人物に出会ってしまったら、誰かに伝えたくて我慢ならない状況下に置かれると予想される。
そして、フェラーリがどんなにカッコよくても、その行いをマネしようとは思う可能性は極めて低い。

つまり、それは人々の憧れの対象になっていないということを示す。

だからと言って、今度は反対に、サンダル履きの中年男性がフェラーリから降りてくるのも心情的に許されるものではない。
やはり、TPOをわきまえたスタイリングはとても重要だし、それが見るものの共感を呼ぶことが、ステータスの向上にも繋がってくる。

自転車にそれなりに乗り込んでいて、機材やウエアに満足するようになったら、次は見る人の立場になって考えてみてはどうだろうか?

http://www.samchuly.co.kr

「アスレジャー」はスポーツウエアと普段着の融合だ。
普段着にスポーツウエアを取り入れるという考え方は、スポーツウエアに普段着を取り入れるという、融合のスタイルに合致する。

その先人としてヒットしたものの代表に、あのウエイブワンの手がける「KAPELMUUR(カペルミュール)」がある。
カペルのヒットの背景には、もしかしたら「ノームコア=究極の普通」というトレンドがあったのではないだろうか?

今回はカペルについては深く探求しないが、そのファン層はバリバリのレーサージャージに抵抗を持つ、女性や、中年層以上の男性がメインだ。

ただ、その特性上どうしても地味になりがちであり、今度は反対にカペルに抵抗を感じる若年層も多くいたことだろう。

残念ながら彼らを完全に許容できる自転車ウエアブランドは少ない。
しかし、工夫次第では何とでもなる問題だ。
そのくらい、スポーツウエアは身近にある。

自転車だから自転車専用のウエアに身を包まなければならないと考えるのは、完全なる固定概念だ。
ただ、多くの人々は間違いを起こすことを恐れ過ぎている

自転車+アスレジャールック

アスレジャーとは、「運動競技」と「余暇」を組み合わせた造語である。
サイクルジャージにおける余暇とのミックスはどのようなものなのか。

今回登場してもらったは、フィクションサイクルの専属読者モデルである谷浦クンだ。
まだ十代の彼も、最近では実業団クラスのレースでの経験も積んでおり、今後の期待も大きい。

あどけなさが残るその表情も、「どこか高校時代の別府クンに似ている」と、年に一回正月にしか会わない親戚の叔母さんから太鼓判を押されている。

そんな谷浦クンが休日のファンライドで愛用しているファッションがまさにアスレジャールックということで、紹介したい。

やはり注目するポイントは各所に取り入れられた蛍光イエローだろう。
シューズカバーも定番のDeFeetでしっかり押さえている。

そこに合わせるように、イエローラインが際立つナイキのサッカージャージをチョイス。
彼曰く、「特に狙わずに好きなものを着る」というのがポリシーのようだ。

しかし何気ない組み合わせも、指し色の蛍光イエローがしっかりと統一感を発揮し、初心者が陥りやすいチグハグファッションになっていないのは流石と言える。

ナイキのサッカージャージは「NWU」と呼ばれる米海軍のデジタルカモに似たデザインだが、背中のイエローラインのおかげで違和感はまったくない。
またそのラインは背中から袖口まで伸びており、自転車のライディングフォームでカラーが目立ちやすい、背中から腕のラインをしっかりキープしている。

そして、アタマはヘルメット、足元はこれまた蛍光イエローのシューズカバーで統一している点も評価が高い部分ではあるが、これはファッションセンスというだけに留まらず、夜間の視認性という部分で見ても素晴らしく機能的である。

また余談ではあるが、強豪自転車競技部を有する神奈川県立藤沢北高等学校、通称「藤北」のユニフォームカラーは、この蛍光イエローであったと記憶している。
現在もプロとして活躍する、綾部勇成、別府史之、福田真平ら著名な選手たちも、かつてはこの蛍光イエロー色のジャージに身を包んでいたのだろう。


モデル紹介
谷浦 史之(1997年/神奈川)

今期よりMERIDAスクルトゥーラTEAMを駆る若きエース。親戚の叔母さんからはシュン君の愛称で親しまれている。その声がアムロレイに似ていることから店長よりスカウトを受け、2016年3月よりフィクションサイクルの専属読者モデルとして活躍。

脚質:オールラウンダー
戦績:ツールド朱雀:2位(U23)(総合34位)
     道の駅TT:3位



当店おすすめアイテムはシューズカバーとソックス

なぜオススメかといえば、安くて手っ取り早いからに他ならない。
特に差し色といて目を惹くのはやはり足元だろう。
オシャレは足元からという言葉が存在するように、非常に重要なポイントなのだ。

シューズカバーといえば、防寒対策の意味合いで用いることも多いが、古くからTTレースでは夏場でも着用されてきたし、薄手のものであれば、真冬を除きいつでも使うことができる。

フィクションサイクル店長がその昔トラックでタイムを競っていたときも、エアロワンピースとシューズカバーはマストアイテムだった。
それはタイムアップに貢献するという意味合いもあったが、最大の理由はカッコイイという部分に尽きる。

他のサイトの情報によれば、ディープリムホイール導入と同様のエアロ効果があるとされているが、正直そこまでのタイムアップを実感したことは残念ながらない。

しかし気分が違うのだ。
一気にモチベーションを上げなくてはならないTTは、一種の精神競技でもある。
パールイズミのコーティングシューズカバーは自分にとってのお守りのようなものでもあったのだ。

ちなみに、各サイトの情報を整理すれば、40km走って30~35秒の短縮が可能との事。
これは1kmあたり0.75~0.9秒の違いということになるので軽視はできない。

防寒用のシューズカバー
SIDIのシューズカバー
SIDIのシューズカバーに防寒効果はそれほど期待できないが、それは夏場でも使えるということでもあり、コーディネートに合わせてシューズを買い揃える必要もなくなるという特典がある。
また最近ではシューズの多くがカーボンソールを採用しているため、足先が冷えやすいという問題もあったが、薄手のシューズカバーでも風は通さないため、多少だが保温効果は見込めるだろう。

シューズカバーの見た目以外の訴求ポイントは以下の通り。

・空気抵抗軽減によるエアロ効果
・汚れからのシューズ保護
・季節に応じた冷え対策
・契約外のシューズが使える、買い替えがバレない(事情のある方々向け)

ここまで揃えば、シューズカバーを使わない手はない。

そしてもうひとつ、シューズカバーをどうしても使いたくないという方にオススメなのがソックスだ。
自転車用ソックスには恐るべき耐久性を誇る商品が存在する。
15年以上前のデサントソックスにまだ穴が開いていないという驚異的データが当店にあるほどだ。

ユニクロなどで消耗品の靴下を調達するのであれば、代わりにファッショナブルな自転車用ソックスを普段も履いてみてはいかがだろうか?

流行と言うもは、いつの時代も移ろい行くものだが、ここ最近の不景気でムーブメントの仕掛け人たちのちょっと強引な手腕も散見される。
雑誌を見ても、少し前まで賞賛されていたものが、次の瞬間には酷評されているということが少なくない。

大きすぎた29er、重かった25C、過大評価だったセラミックベアリングよろしく、蛍光カラーが誌面で反旗を翻されるのも、そう遠くない未来なのかもしれない。

しかし、大事なのは“今”だ。
たった二千円のくつ下で時代の流行に乗れるなら、それはそれで良いと思う。



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