2017年5月30日

新型ジェッターを発売前に写真だけ見てMTBに改造する

クロスバイク型の電動アシスト自転車として人気を博していたPanasonicの「ジェッター」だったが数年前からカタログからその姿を消していた。
そのジェッターが2017年の夏に復活するというニュースが入ってきたのだが、なんと仕様が前後ディスクブレーキになっているということで、これまでのただバッテリー容量が大きくなるだけのモデルチェンジとは一味違った走りを見せてくれそうだ。

この手の電動アシスト自転車を好む自転車ファンにとってジェッターは改造ベースとして愛されていたのも有名な話。
今回の発表を受けてさっそく構想を膨らましているコアな電動フリークもいるかもしれない。
こういったものは『誰が一番最初にやるか』も意外と重要なことなので、まだ誰も手出しができない状態でイニシアティブを取りに行くのが今回の作戦だ。


新モデルはディスク標準化とタイヤの大径化がポイント

http://cycle.panasonic.jp/products/elhc/

上の画像が2017年モデルとなるジェッター
品番はBE-ELHC44とBE-ELHC49
従来のコンセプトを踏襲しつつも、タイヤサイズが700×32Cから700×38Cに。
前後ブレーキはVブレーキからディスクブレーキとグレードアップされている。
メーカーサイトでは詳細のスペックまで記載されていないためメカニカルなのか油圧式なのかは分からないが、正直そんなものは全部交換してしまうので、ディスクマウントさえあれば十分というのがこの手の上級者の考え方ではないだろうか。

従来モデルではディスクマウントの創設がネックとなり改造ジェッターのハードルを一気に上げていた。

関連情報
Panasonic「ジェッター」のディスクブレーキ化
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2013/07/panasonic.html

こちらが旧型のジェッター
品番でいうとBE-ENHC544とBE-ENHC549だが、写真のモデルはフレームサイズの小さい
440mmのほうだ。
この2台を見比べるとやはり旧型のホイールが華奢なイメージを受けるが、新型は脱リムブレーキによってリムサイドのブラックアウトが可能となったことで、よりタイヤとの一体感が生まれ、よりスタイリッシュな印象を与えている
さらにバッテリーの小型化によってスタイリッシュに、よりスポーティな雰囲気になったジェッターだが、そのバッテリー容量は13.2Ahから16Ahと約3Ahも増量されており、この部分が技術革新の目覚ましさを感じるところとなるだろう。

その他にもギアの10から8段数に減っていたりと様々違いはあるが、そういう部分は触れる必要はないと思っている。
そもそも気に入らなければ簡単に交換できるし、MTBとはそんなところにこだわって走るものでもなからだ。

なおこのフレームが440mmなのか490mmなのかは不明確だが、過去のモデルと重ね合わせると490mmの大きいほうのフレームだということが分かる。

電動アシストバイクの大本命「MTB化」

個人的な話ではあるが自分はあまりクロスバイクに乗らない。
買い物であればカゴ付きが便利だし、舗装路ならロードレーサー、平地ならTTバイク、里山ならややアップライトなMTB、下りならDHバイク、エンデューロならエンデューロバイク、トラックならピスト・・・
それ専用の自転車を用意してあるので、クロスバイクの出番がほとんどないのだ。

その中で電動アシスト自転車も上の用途に合わせて取り入れてきたが、どうも国内のレギュレーションでシックリ来るのは買い物用と下り系MTBだけだった。

もし自分が乗るとしたら電動アシストは絶対にMTBだ。
ということで今回ジェッターはMTB系パーツに換装されることなった。
写真と言ってもCGで書くなんてスキルは持ち合わせていないので、それらしい画像を見つけてくるところから開始する。
27.5インチに手ごろな2.3タイヤ(ハイローラーは2.4の可能性もあるが)
ジェッターの差し色である水色のロゴのENVEホイールを装着したサンタクルーズのブロンソンが今回のターゲットだ。

cat eyeスピードメーター説明書より

タイヤサイズについては外周を合わせなけらばならないが、700×38Cの外周が約218cmであり、27.5インチの2.25がほぼ同等の218cmなので、おそらく2.3幅くらいは余裕で履けるはずである。

タイヤを含めたホイール直径もこの表からある程度は分かる
かなり雑な計算式だが

【タイヤ幅(mm)】+ 【リム直径(ETRTO)】+ 【タイヤ幅(mm)】

これが目安となる。
例えば、700x38Cであれば、622mm + (38mm x 2) = 698mm となる

またインチ表記の場合
例えば、27.5x2.30であれば、584mm  + (2.30inch x 2 x 25.4 ) = 700mm となる

つまりこの2つのタイヤ直径はかなり近しいということだ。

電動のフレームはユニットの取り付けマウントの関係でクリアランスには割と余裕があるが、外周が大きくなりすぎるとユニット下部に接触してしまう問題や、法規上の懸念材料としてメーカーが意図した正しい速度検知ができなくなりレギュレーション違反を起こす可能性も考慮しなくてはならない。

※現物を見てないため根拠はありません

フリーソフトGIMPとエクセルで画像処理

使うソフトは何でもいいが、GIMPくらいがあると作業が早い。
またパーツレイアウトを見るのみエクセルは欠かせないルーツとなる。
消しゴムツールを使って実際と同じように不要なパーツは取り外していこう。

この残った部位が今回残す箇所。
基本的にフレームとユニットとバッテリー以外はすべて交換となる予定だ。
チェーンケースはすぐに外したくなる気持ちも分かるが、結果的にあまり意味が無いのでそのまま残す。
またクランクについてもQファクターの広がりを嫌って純正のままだ。
ネット上にはMTB用クランクに交換されたハリヤやジェッター、他にもPASブレイスやリアルストリームの画像が流れているが、あれは見た目優先であり実用面においてペダル幅が看過できないほどに広がるデメリットをあわせ持つ。

フロントハブ付近に装着されているスピードセンサーはリアホイールのディスク側に移設する。

仮想ドナーのサンタクルーズ側。
パーツごとに切り抜いていく。

消えてしまったスプロケットを復元。

ただ切り抜くだけでなくフレームなどが重なった部分は上からレタッチして純粋なホイールに修正しよう。
細かいことを言えば、ジェッターはどう見てもスルーアクスルではないので実際にこのホイールを装着することはできない。
その時はOLD135mmハブで組みなおす必要がある。

角度が重要となる組み立て作業

 ジェッターのフロントフォークはリジットのため160mmストロークのサスペンションフォークを組むためには車体側の角度を変えてあげる必要がある。
ペダルの角度を見てわかるようにかなり反時計回りにフレームを回転させている。
このあたりが現実世界では何も考えなくても進む部分だが、言い換えれば実際のパーツ交換でもジオメトリーが大きく変わってしまう可能性があるということだ。

関連情報
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2014/08/panasonic.html

ハンドルとシートの取り付け

車体の回転にあわせてシートポスト角もチェック
元になるサンタクルーズのヘッドチューブ角は66度と今風にかなり寝ているので、フロントフォーク角度だけは素直にそのままで大丈夫そうだ。


とりあえず仮組が完了する。
この段階で一所懸命にシミュレーションして問題点を洗い出す。
やはりフロントフォークのストロークを大きく取りすぎたためBB位置が異常に上がってしまったのと、シート角がかなり寝てしまったことがバイクコントロールに若干影響しそうだ。

もともと電動アシストはバッテリーのスペース分だけリアセンターが長いのだが、それによってフロントがやや詰まり気味という特性があるので、多少シート角が寝ていても乗って違和感はない。
またBBハイトも少しだけ高いほうがいい。
それはユニットの幅の関係でペダル位置が左右に広く、ロードクリアランスがほとんど確保できないためで、純正の状態でも普通のクロスバイクのように乗るとすぐにペダルが地面と接触するのを体験した人も少なからずいるはずだ。
その点を踏まえてフロントフォークのストロークを110~120mm前後に調整することとした。
フォークのストローク変更
フォーククラウンの上に見えるのはテーパーコラムを変換するためのヘッドパーツを想定している。
予算的にFIRE EYEを採用した。
44mmのセミインテグラルヘッドに1.5テーパードフォークが取り付け可能となる。

実際には面倒な作業でもパソコン上なら30秒でストローク変更可能だ。
 許容範囲内となった。
ジェッターはヘッドチューブが長いためハンドル位置も下げたほうがいい。
29erバイクからフラットなハンドルをもらってきた。
またフロントフォークのコラムはかなりの長さを要するため中古パーツの流用では厳しいことが多い。
ヘッドチューブは上下あわせて10mm程度カットすることも可能だろうが非常にリスキーなのでやめておく。
各ワイヤーなどを組み込んで作業は完了となる。
駆動系は10速に最大ロー36Tでの運用だが、電動アシストの恩恵もあってこれ以上大きなスプロケットは必要ない感じだ。
欲を言えば耐久性に不安が残る10速チェーンよりも8段や9段の枯れた規格を使ってみたいとも思う。
最近ではシマノ純正以外でも様々な段数のスプロケットがあるのでありがたい。

ドロッパーポストもステルスで無事に組み込めた。
シートパイプの底面はBBではなくユニットマウントなので加工次第でクリアランスが作りやすい。

背景と組み合わせて試走シミュレーション

純正状態とは見違えるほどの走破性を得ることに成功したジェッター。
太いタイヤがもたらす安心感によって傍若無人な振り回しにもシビアにならなくてすむのはかなり大きなアドバンテージだ。
従来の改造ジェッターでは多くの人が32Cから28Cにサイズダウンし走りの軽さを追及していた。
中には25C以下にチャレンジするツワモノも見かけたことがあるが、ただタイヤを細くすることだけに囚われすぎてエアボリュームを犠牲にすることでどれほど多くのメリットを失っているのか見落としていることが多い

タイヤを細くすればそれだけ走行抵抗が減り、タイヤ自体の重量減による恩恵もあるが、タイヤ技術の発展とチューブレス化の標準化によってそのメリットも薄れつつある。
今回のカーボンホイール換装によって純正より大幅な軽量化も達成しているので漕ぎ出しの軽さも圧倒的だ。

これはマーケット動向に逆らうものでもなく、ファットバイク、27.5+、またロードバイクでも25Cや28Cタイヤのラインナップが増えていることからも分かるように、これこそ世界のトレンドなのだ。

アシスト領域については24km/hまでと国内レギュレーションに準じているが、実際にMTBでアシストが欲しいのがその範囲にあるため、パワー不足を感じることはほとんどない。
しいて言えば、ママチャリ型とほぼ同等の味付けのため、低速域ではオーバーパワーに違和感を覚えることもあった。
1~10km/hで最大出力を発揮するプログラムはギア変速を多用するスポーツ車にはあまり相応しくない。
その部分に関して言えば2008年までの旧レギュレーションのほうが実は適切だった気もする。

フレームの剛性については必要十分であり、もともと国内メーカー特有の安全マージンの取り方がMTB転用においても心強い。
やや間延びしたリアセンターがクイックな挙動を阻害している感じもあるが、そういうものと思って扱えば不自由はそれほど感じさせないのは元の設計が優れているからだろう。
応力集中が懸念されるのはユニットマウント周辺だが、極厚のアルミプレートからは信頼感すら漂っている。

まだ煮詰めなければならない点もないわけではない

まずはチェーントラブル
電動は出力用の小さいスプロケットをチェーンが経由するため、その受け渡しに失敗すればチェーンはすぐに脱落してしまう。
やはり海外で主流のフロントチェーンリング1枚で駆動させるほうがトラブルは少なくなるだろう。
この点についてはチェーンケースを外し、ガイドプレートを増設する必要を感じた。

そして最大のネックはやはり重量だ。
テスト地で想定したのはカリフォルニアの乾いたダートと日本の里山。
さすがe-Bike普及の進む海外の地形だけあって乗車区間が長く、押し上げエリアもなんなくクリアした。
地元のライダーが「Push!! Push!!」と励ましあってバイクを押し上げるようなシーンにおいても電動の恩恵でバイクを降りることはなかった。

16Ahという大きなバッテリー容量にも助けられ、全長100km程度のライドでもバッテリーはギリギリ持ってくれたのは、自動車の理論燃費を疑いの目をもって眺めている人にとっても新鮮なことだと受け取られるだろう。
(残念ながらアメリカ西海岸はこれほどe-Bikeに適した立地条件でありながらe-Bike自体はほとんど販売されていない)

一方で日本の里山の場合は少し勝手が違う。
ジープロードでは絶好調だったが、ではここで階段を担ぎましょうだとか、雑木林をかき分けて進みましょうとか、丸太橋を渡りましょうとか、とにかく絶対に乗車できない区間が頻繁に登場するのだ。

近代化の進んだMTBが10kg台だとか、あるいは9kg台だとか、そのライバルたちのバイク2台分を背負うためにバッテリーの消耗よりライダーのほうが先に電池切れになりそうな思いをした。

自分が思うに、いかに電動アシスト自転車といえども20kgは実用面で厳しい。
せめて15kg台であれば戦闘力的に一般的なMTBを超えられる可能性が出てくると感じた。

大きなパワーを発揮できる海外と違い、少ないパワーを最大限に活用するために、もっと小型で低出力のユニットが出てくれば面白いことになりそうだが、そうなるとまたしても日本国内でガラパゴス化してしまうのがなんとも難しいところだ。

ただ法規制の緩い海外マーケットにおいてもいずれ低出力ユニットの需要は必ず出てくるはずなので、かつて日本のコンパクトカーが世界を席巻したように、日本独自商品を世界に売り出すチャンスでもあると思う。

とりあえず今後多くの自転車店がこのジェッターを手がけるだろうと予想されるなかで、先手を打ってひとつの方向性を示せたことに満足したので、当店ではこのジェッターの導入を見送ることとした。

発売前の商品の画像を元に『導入、改造、走行、インプレ、飽きる』というサイクルを辿るのは売上低迷にあえぐ自転車業界にとってなんと恐ろしいことなのだろうか。

※分かると思いますが、この内容は完全にフィクションです。
※メーカーの想定している使用方法を守って楽しい自転車ライフを。

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気のトピックス(全期間)

/*追跡スクロール2*/